地域森林計画対象民有林(5条森林)とは?伐採に許可が必要?

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地域森林計画対象民有林(5条森林)は都道府県が定めた地域森林計画の対象になる「民有林」です。
ただ、山林に入っても「国有林」なのか「民有林」なのか、
民有林であっても地域森林計画対象ではない森林なのか見た目では分かりません。
また、地域森林計画対象民有林だと伐採の際に手続きが必要になってきます。

そこでこの記事では、地域森林計画対象民有林(5条森林)や森林法での規制について詳しく解説していきます。
許認可にかかる具体的な事例などもご紹介しますので、ぜひご覧ください。

目次
1.地域森林計画対象民有林(5条森林)とは?
2.地域森林計画対象民有林(5条森林)の見分け方
3.地域森林計画対象ではない民有林なら手続き不要? 
4.地域森林計画対象民有林(5条森林)の伐採にかかる手続き
5.地域森林計画対象民有林(5条森林)と対象外の民有林が混在する場合
6.その他 大変になる手続きの事例
7.地域森林計画対象民有林(5条森林)に関する事例紹介
8.まとめ


1.地域森林計画対象民有林(5条森林)とは?

森林法第4条により、森林の整備や保全の目標、伐採や造林の計画量や施業の基準等を定めるために、
国(農林水産大臣)で5年ごとに15年を1期とした「全国森林計画」がたてられています。

平成31年(2019年)4月1日から15年間を計画期間とする現行の全国森林計画は、平成30年10月に閣議決定され、新たな森林・林業基本計画(令和3年6月閣議決定)を踏まえて令和3年6月に変更されました。

そして、森林法第5条により、全国森林計画に即して、都道府県知事が民有林について5年ごとに10年を1期とした「地域森林計画」がたてられています
その地域森林計画の対象となった民有林が「地域森林計画対象民有林」です

地域森林計画対象民有林のことを「5条森林」と呼ばれるのはこのことからです。

ただ、「民有林」とありますが、「民間」の森林という意味ではありません。
森林はその所有者に応じて次のように分かれています。

森林の種類 所有者 割合
国有林 31%
民有林 県や市町村 (公有林) 11%
個人や企業 (私有林) 58%

 


その意味では、国有林ではない、地域森林計画の対象となった森林となります。
また、この「地域森林計画対象民有林」となっている森林は、伐採の際には許可または届出の手続が必要になります。



2.地域森林計画対象民有林(5条森林)の見分け方

地域森林計画対象民有林(5条森林)かどうかを見分けるには、都道府県や市町村の林務課などの森林の担当部署で調査を行う必要があります。

森林計画図・森林簿を確認させてもらい、地域森林計画対象民有林(5条森林)の区域内か区域外かを確認します。
(探したい位置の広域の地図や地番などを担当部署に伝えられると探すのがスムーズになります。)

また、森林計画図のプリントアウトには手数料がかかることも多いため準備しておきましょう。

最近では、都道府県のGISなどでネット上での調査が可能な自治体もあります。




3.地域森林計画対象ではない民有林なら手続き不要?

地域森林計画対象民有林(5条森林)に該当しない民有林であれば、森林法の対象にはなりません

土地の登記簿謄本(履歴事項全部証明書)に地目が山林とあっても、地域森林計画対象林でなければ森林法の対象にはなりません。

ただし、逆に土地の地目が山林以外の「雑種地」「原野」でも地域森林計画対象民有林に該当していることがあります

山地での伐採や開発計画がある場合は、必ず森林計画図・森林簿で地域森林計画対象民有林(5条森林)ではないか確認が必要です。




4.地域森林計画対象民有林(5条森林)の伐採にかかる手続き

地域森林計画対象民有林(5条森林)の伐採を行うには、前もって手続きを行う必要があります。

1haを超える地域森林計画対象民有林(5条森林)の伐採について、森林法に定められた林地開発許可を取得する必要があります。
※令和4年度に政令改正があり、太陽光発電設備の設置に係る伐採は0.5haを超えるものとなっています。

尚、1ha以下の場合は伐採届の提出となります。

また、下に記載している森林法第十条の二に(開発行為の許可)とあるように、1haを超える森林での「開発行為」となっていますが、立木の伐採のみで土地の改変を伴わない場合であっても、太陽光パネルのような設備の設置によって土地の形状又は性質を復元できない状態にするおそれがあることから、許可が必要とされています。


【関係法令条文】

・森林法第十条の二(開発行為の許可)

地域森林計画の対象となつている民有林(第二十五条又は第二十五条の二の規定により指定された保安林並びに第四十一条の規定により指定された保安施設地区の区域内及び海岸法(昭和三十一年法律第百一号)第三条の規定により指定された海岸保全区域内の森林を除く。)において開発行為(土石又は樹根の採掘、開墾その他の土地の形質を変更する行為で、森林の土地の自然的条件、その行為の態様等を勘案して政令で定める規模をこえるものをいう。以下同じ。)をしようとする者は、農林水産省令で定める手続に従い、都道府県知事の許可を受けなければならない。【以下略】


・森林法施行令第二条の三(開発行為の規模)

法第十条の二第一項の政令で定める規模は、次の各号に掲げる行為の区分に応じ、それぞれ当該各号に定める規模とする。
一 専ら道路の新設又は改築を目的とする行為 当該行為に係る土地の面積一ヘクタールで、かつ、道路(路肩部分及び屈曲部又は待避所として必要な拡幅部分を除く。)の幅員三メートル
二 太陽光発電設備の設置を目的とする行為 当該行為に係る土地の面積〇・五ヘクタール
三 前二号に掲げる行為以外の行為 当該行為に係る土地の面積一ヘクタール


・森林法第十条の八(伐採及び伐採後の造林の届出等)

森林所有者等は、地域森林計画の対象となつている民有林(第二十五条又は第二十五条の二の規定により指定された保安林及び第四十一条の規定により指定された保安施設地区の区域内の森林を除く。)の立木を伐採するには、農林水産省令で定めるところにより、あらかじめ、市町村の長に森林の所在場所、伐採面積、伐採方法、伐採齢、伐採後の造林の方法、期間及び樹種その他農林水産省令で定める事項を記載した伐採及び伐採後の造林の届出書を提出しなければならない。【以下略】






5.地域森林計画対象民有林(5条森林)と対象外の民有林が混在する場合

林地開発許可は1ha以上(太陽光発電事業は0.5ha以上)、伐採届は林地開発許可基準未満となりますが、
地域森林計画対象民有林(5条森林)に該当しない山林は森林法の対象にはならないので、手続きは不要です。

明確に対象外であれば分かりやすいのですが、地域森林計画対象民有林をまたいだ開発計画となることもあります。

その場合、基本的には、地域森林計画対象民有林(5条森林)に該当する部分の面積を測量などで測定し、
該当する面積を明らかにして、その面積に応じた手続きとなります。


開発計画全体は1.5haあるのですが、そのうち0.7haが地域森林計画対象外なので、
申請対象は0.8haとなり、1ha以下となるので、林地開発許可申請ではなく、伐採届の申請となります。



6.その他 大変になる手続きの事例

・都道府県境や市町村境をまたがる開発計画
 →またがる両方の自治体に対して計画全体を示した申請が必要になります。

・保安林が開発計画地内にある
 →保安林の種類にもよりますが、保安林の解除は限りなく難しいです。
  原則として解除はできない、というものであり絶対にできないという場所もあるので、早めに確認しましょう。

 (参考)保安林の主な種類 林野庁HPより
   水源かん養保安林、土砂流出防備保安林、土砂崩壊防備保安林、飛砂防備保安林、
   防風保安林、水害防備保安林、潮害防備保安林、干害防備保安林、防雪保安林、風致保安林など



7.地域森林計画対象民有林(5条森林)に関する事例紹介

ここからは、株式会社環境と開発にご相談頂いた地域森林計画対象民有林(5条森林)の許可申請に関わる事例をご紹介します。
林地開発許可の取得や変更を検討されている方は、是非参考にしてください。


地域森林計画対象民有林(5条森林)林地開発許可申請のご相談事例①:大規模造成計画の林地開発事例



【ご要望】
計画された発電量を満たす太陽光パネルエリアの確保と、事業者の事業計画実現を想定した期限までに林地開発許可を取得したいとのご要望でした。

【課題】
森林区域で起伏のある地形だったので、土量バランスをとりながらパネル設置面をいかに作り出せるかが大きな課題となりました。

【施策】
日本各地での多くの案件を経験して積み上げた実績をもって、単に技術基準や関係する続きの対応だけでなく、県や市及び地元住民が懸念している事柄を見つけ出し、それらについて解決・解消するよう対応いたしました。

①現況地形測量(航空写真測量・地上測量)
②河川能力調査・資料作成
③土木造成設計
④雨水流出抑制計画
⑤雨水調整池構造計算・設計
⑥林地開発許可取得(森林法)
⑦農地転用許可取得(農地法)
⑧土壌汚染対策法第4条改変届出
⑨公共用財産(道路)用途廃止・払下げ等許可取得
⑩法定外公共物(道路・水路)使用許可取得
⑪関連許可等の取得(道路法)
⑫太陽光発電に関わる各種関連条例対応


→ 地域森林計画対象民有林(5条森林)林地開発許可申請の本事例のページはこちら



地域森林計画対象民有林(5条森林)林地開発許可申請のご相談事例②:現状の地形をベースに計画した林地開発事例



【ご要望】
森林区域で大規模な造成が難しい地形であったため、現状の地形をベースにしたいとのご要望でした。

【課題】
現状の地形をベースにパネルレイアウト出来るように設計を検討しました。
雨水調整池の設置場所の選定がポイントでしたが、構造を工夫して小さな面積で必要容量を確保しました。

【施策】
本事例では以下の施策を行いました。

①現況地形測量(航空写真測量・地上測量)
②土木造成設計
③下流流下能力調査
④雨水流出抑制設計(雨水調整池)
⑤雨水調整池構造計算
⑥林地開発許可取得(森林法)
⑦農地転用許可取得(農地法)
⑧土壌汚染対策法第4条改変届出
⑨法定外公共物(道路・水路)払下げ許可取得

 

→ 地域森林計画対象民有林(5条森林)林地開発許可申請の本事例のページはこちら




8.まとめ

地域森林計画対象民有林(5条森林)について、まずは該当するかどうかを確認し、対象の面積に応じて手続きが必要になります。
特に林地開発許可に関しては、事前協議から含めると半年から1年以上かかるような自治体もあります。
早めの調査と計画立てが肝心です。

林地開発の伴う施設や再エネ発電所の設置や更新は、様々な法令が関係してくるため、専門家のサポートが必要なケースが多くなります。
設置準備から最終的な手続きまで、非常に多くのハードルを越えていく必要があります。
株式会社環境と開発は、長年のコンサルティング経験を活かしたサポートをしていますので、林地開発にかかる各種規制にお困りの際はお気軽にコンサルティング担当にご相談ください。

→太陽光発電所(林地開発)新設・拡張の紹介ページはこちら

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【開発許可(都市計画法)・林地開発許可の関連コンテンツ】

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公益財団法人 日本産業廃棄物処理振興センター
公益財団法人 廃棄物・3R研究財団
一般社団法人 廃棄物資源循環学会

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