産業廃棄物処理業の許可の種類について
産業廃棄物処理業の許可と聞くと「最終処分場」や「焼却場」でゴミを処理する事業のための許可申請とイメージする方も多いでしょう。
また、同じような言葉で、「産業廃棄物処分業」とどう違うのか、種類がわかりにくいと感じている方も多いのではないでしょうか。
そこで、この記事では、産業廃棄物処理業の許可の種類について申請の内容、流れや種類ごとの注意点なども、詳しく解説していきます。
これから産業廃棄物処理業を始めたい、許可申請する前に気を付けることを確認したいという方は、ぜひ参考にしてください。
2.産業廃棄物処理業の許可の種類
3.種類ごとの許可申請書類について
4.産業廃棄物処理業の許可申請で注意すべき欠格要件
5.産業廃棄物処理施設の設置許可は別途必要になることも・・・
6.まとめ
1.産業廃棄物処理業とは
産業廃棄物処理業は、他人から委託を受けて産業廃棄物を運搬、保管、処分(焼却、破砕、埋立など)を行う事業です。
産業廃棄物処理業は「産業廃棄物収集運搬業」と「産業廃棄物処分業」に分かれています。
産業廃棄物処理業の許可としては、産業廃棄物収集運搬業許可と産業廃棄物処分業許可に分かれています。
収集運搬業の許可を持っている方も、処分業を行いたい場合は処分業の許可を取る必要があります。
また、「産業廃棄物処理業」と「特別管理産業廃棄物処理業」は別種類の許可になっています。
廃棄物処理法で、
「爆発性、毒性、感染性その他の人の健康又は生活環境に係る被害を生ずるおそれがある性状を有する廃棄物」
を特別管理産業廃棄物として規定し、必要な処理基準を設け、通常の廃棄物よりも厳しい規制を行っています。
どのような廃棄物が特別管理産業廃棄物に該当するかについては、参考資料をご覧ください。
参考資料:環境省HP「特別管理廃棄物規制の概要」
特別管理産業廃棄物について、排出者からの委託を受けて行う収集運搬や処分は、
「特別管理産業廃棄物収集運搬業許可」や「特別管理産業廃棄物処分業許可」が必要になります。
また、「他人から委託を受けて」とあるように、自己事業で発生した産業廃棄物を収集運搬や処分すること自体は「収集運搬業」「処分業」は不要です。
詳しくは別記事に解説しているので、そちらをご覧ください。
→自らの産業廃棄物を処理する場合 自社処分に許可が必要?
2.産業廃棄物処理業の許可の種類
産業廃棄物処理業の許可を受けるためには、管轄する都道府県・政令市に許可申請を出す必要があります。
許可申請の種類は、それぞれ「新規許可申請」「更新許可申請」「変更許可申請」があります。
また、申請の際に所定の手数料が必要です。
許可申請の種類 | 特徴 |
新規許可申請 | 管轄自治体で初めて産業廃棄物処理を業として行おうとするとき |
更新許可申請 | 許可の有効期間(5年)ごとの許可更新を行うとき ※「優良産廃処理業者認定制度」の適用を受けた場合は有効期間は7年 |
変更許可申請 | 許可取得後に、産業廃棄物の種類の追加など、事業の範囲を変更するとき |
<産業廃棄物処理業>
種類区分 | 許可申請の種類 | 手数料 |
収集運搬業 | 新規許可 | 81,000円 |
更新許可 (積替え保管を除く) (積替え保管を含む) |
42,000円 |
|
73,000円 | ||
変更許可 | 71,000円 | |
処分業 | 新規許可 | 100,000円 |
更新許可 | 94,000円 | |
変更許可 | 92,000円 |
参考までに特別管理産業廃棄物については次のとおりです。
<特別管理産業廃棄物処理業>
種類区分 | 許可申請の種類 | 手数料 |
収集運搬業 | 新規許可 | 81,000円 |
更新許可 (積替え保管を除く) (積替え保管を含む) |
43,000円 |
|
74,000円 | ||
変更許可 | 72,000円 | |
処分業 | 新規許可 | 100,000円 |
更新許可 | 95,000円 | |
変更許可 | 95,000円 |
なお、許可申請に先立ち、産業廃棄物の処理に関しての必要な知識を修得するために、
財団法人日本産業廃棄物処理振興センターが実施する産業廃棄物処理業許可講習会を受講してください。
→財団法人日本産業廃棄物処理振興センターのHPはこちらから
許可申請にはこの講習の修了証が必要になります。
3.種類ごとの許可申請書類について
産業廃棄物処理業(収集運搬業・処分業)許可申請の申請書類については、廃棄物処理法や廃棄物処理法施行規則に定められています。
ただし、施行規則に列挙されたもの以外の書類の提出を求められることもありますので行政にご確認ください。
一例として、東京都の産業廃棄物収集運搬業と処分業の種類ごとの許可申請書類は以下のとおりです。
<産業廃棄物収集運搬業 許可申請書類>(東京都 令和5年時点)
2.変更事項確認書・新旧役員等対照表
(注 新規の場合は不要)
3.事業計画の概要
4.運搬車両(又は船舶)の写真
5.運搬容器等の写真
6.事業の開始に要する資金の総額及びその資金の調達方法
(注 貸借対照表、損益計算書、株主資本等変動計算書、個別注記表を添付している場合は不要)
7.資産に関する調書(個人用)
8.誓約書
9.最新の定款の写し
10.法人の登記事項証明書(申請者、5%以上の株主又は出資者)
11.住民票抄本(本籍が記載されたもの・マイナンバーが記載されていないもの) ※
12.成年被後見人等に該当しない旨の登記事項証明書等 ※
13.政令使用人に関する証明書(当該使用人がいる場合) ※
14.申請者の許可証の写し(新規の場合は他道府県市のものを含む) ※
15.貸借対照表(直近3年分)
16.損益計算書(直近3年分)
17.株主資本等変動計算書(直近3年分)
18.個別注記表(直近3年分)
19.法人税の納税証明書「その1 納税額等証明用」(直近3年分)
20.所得税の納税証明書「その1 納税額等証明用」(直近3年分)
21.経理的基礎を有することの説明書(p.24)及び記載者の資格証明書、
又は返済不要な負債の額及びその負債が返済不要であることが分かる書類(任意書式)
(資産状況が悪いなど該当する場合のみ)
22.講習会修了証の写し
23.ICタグ付き自動車検査証の場合は自動車検査証記録事項の写し、従来の自動車検査証の場合は車検証の写し(使用する全車両)
24.〔船舶を使用する場合〕船舶の使用権原を証明する書類(使用する全船舶)
※については、
・役員等(監査役、相談役、顧問を含む)
・5%以上の株主又は出資者
・政令使用人
に該当する全員分です。
<産業廃棄物処分業 許可申請書類>(東京都 令和5年時点)
2.変更事項確認書・新旧役員等対照表
(注 新規の場合は不要)
3.誓約書
4.事業の開始に要する資金の総額及びその資金の調達方法
(注 貸借対照表、損益計算書、株主資本等変動計算書、個別注記表を添付している場合は不要)
5.資産に関する調書(個人用)
6.事業計画の概要
7.最新の定款の写し
8.法人の登記事項証明書(申請者、5%以上の株主又は出資者)
9.住民票抄本(本籍が記載されたもの・マイナンバーが記載されていないもの) ※
10.成年被後見人等に該当しない旨の登記事項証明書等 ※
11.政令使用人に関する証明書(当該使用人がいる場合) ※
12.申請者の許可証の写し(新規の場合は他道府県市のものを含む) ※
13.貸借対照表(直近3年分)
14.損益計算書(直近3年分)
15.株主資本等変動計算書(直近3年分)
16.個別注記表(直近3年分)
17.法人税の納税証明書「その1 納税額等証明用」(直近3年分)
18.所得税の納税証明書「その1 納税額等証明用」(直近3年分)
19.経理的基礎を有することの説明書(p.24)及び記載者の資格証明書、
又は返済不要な負債の額及びその負債が返済不要であることが分かる書類(任意書式)
(資産状況が悪いなど該当する場合のみ)
20.講習会修了証の写し
※については、
・役員等(監査役、相談役、顧問を含む)
・5%以上の株主又は出資者
・政令使用人
に該当する全員分です。
許可申請に際しては、行政窓口への申請時に内容の形式審査(書類が揃っているかの確認)後に受付となります。
申請書類に足りないものがあると、当然受付されません。
4.産業廃棄物処理業の許可申請で注意すべき欠格要件
産業廃棄物処理業の許可申請の際に、「欠格要件」といって、これに該当すると許可が認められない、もしくは取得後に取り消されてしまう項目が廃棄物処理法第7条第5項第4号に定められています。
欠格要件とは、産業廃棄物処理業を行う人(法人含む)が適正にその事業を行うことができるか、を判断するための条件です。
対象となるのは以下のとおりです。
・個人事業主
・法人(会社自体)
・法人役員(代表取締役、取締役、執行役員)
・5%以上の株主、相談役、顧問
・政令使用人
また、欠格要件については、以下のとおりです。
1、成年被後見人・被保佐人・破産者で復権を得ない者
2、禁固以上の刑に処せられ、その執行を終わり、又は執行を受けることがなくなった日から5年を経過しない者
3、次に掲げる法令等に違反し、罰金以上の刑に処せられ、その執行を終わり又は執行を受けることがなくなった日から5年を経過しない者
・廃棄物処理法
・浄化槽法
・大気汚染防止法
・騒音規制法
・海洋汚染及び海上災害の防止に関する法律
・水質汚濁防止法
・悪臭防止法
・振動規制法
・特定有害廃棄物等の輸出入等の規制に関する法律
・ダイオキシン類対策特別措置法
・ポリ塩化ビニフェル廃棄物の適正な処理の推進に関する特別措置法
次に掲げる法律に違反した者
・暴力団員による不当な行為の防止等に関する法律(第31条第7項を除く。)
次に掲げる罪を犯し、罰金以上の刑に処せられ、その執行を終わり又は執行を受けることがなくなった日から5年を経過しない者
・刑法第204条(傷害)
・刑法第206条(現場助勢)
・刑法第208条(暴行)
・刑法第208条の2(凶器準備集合及び結集)
・刑法第222条(脅迫)
・刑法第247条(背任)
・暴力行為等処罰に関する法律
4、次に掲げる許可を取り消され、その取消しの日から5年を経過しない者
・一般廃棄物収集運搬・処分業の許可の取消し
・(特別管理)産業廃棄物収集運搬・処分業の許可の取消し
・浄化槽法第41条第2項による許可の取消し
5、法人で暴力団員などがその事業活動を支配するもの
6、暴力団員による不当な行為の防止等に関する法律に規定する暴力団員又は暴力団員でなくなった日から5年を経過しない者
7、その業務に関し不正又は不誠実な行為をするおそれがあると認めるに足りる相当の理由がある者
欠格要件に該当する中で、環境にかかわるものや業務に関わるものは把握がしやすいと思いますが、
交通事故や脱税などで禁固以上の刑となった場合も該当します。
会社の役員や5%以上の株主の方が該当していたなど、把握が直ちに難しいこともあり得ます。
許可申請の直前に慌てることにならないようご注意ください。
5.産業廃棄物処理施設の設置許可は別途必要になることも・・・
産業廃棄物処理業の許可は、処理の委託を受けて業としておこなうために必要なものですが、
処理のために特定の施設を設置する場合は「設置許可」が別途必要になります。
特定の施設というのは、廃棄物処理法第15条に規定する設置許可対象施設(15条施設)です。
下記の施設を設置する際には産業廃棄物処理施設の設置許可が必要になります。
施設の種類 | 処理する廃棄物の種類 | 処理能力 |
脱水施設 | 汚泥 | 1日当たり10立方メートルを超えるもの |
乾燥施設 | 汚泥 | 1日当たり10立方メートルを超えるもの |
乾燥施設(天日乾燥) | 汚泥 | 1日当たり100立方メートルを超えるもの |
焼却施設 | 汚泥 | 1日当たり5立方メートルを超えるもの、1時間当たり200kg以上又は火格子面積2平方メートル以上のもの |
廃油 | 1日当たり1立方メートルを超えるもの、1時間当たり200kg以上又は火格子面積2平方メートル以上のもの | |
廃プラスチック類 | 1日当たり100kgを超えるもの又は火格子面積2平方メートル以上のもの | |
廃PCB(注1)等、PCB汚染物 又はPCB処理物 |
すべてのもの | |
その他の産業廃棄物 | 1時間当たり200kg以上又は火格子面積2平方メートル以上のもの | |
油水分離施設 | 廃油 | 1日当たり10立方メートルを超えるもの |
中和施設 | 廃酸・廃アルカリ | 1日当たり50立方メートルを超えるもの |
破砕施設 | 廃プラスチック類 | 1日当たり5tを超えるもの |
木くず・がれき類 | 1日当たり5tを超えるもの | |
コンクリート固型化施設 | 有害物質を含む汚泥 | すべてのもの |
ばい焼施設 | 水銀又はその化合物を含む汚泥 | すべてのもの |
硫化施設 | 廃水銀等 | すべてのもの |
シアン分解施設 | シアン化合物を含む汚泥、廃酸、廃アルカリ | すべてのもの |
廃石綿等又は石綿含有産業廃棄物の溶融施設 | 廃石綿等又は石綿含有産業廃棄物 | すべてのもの |
廃PCB等又はPCB処理物の分解施設 | 廃PCB等又はPCB処理物 | すべてのもの |
PCB汚染物又はPCB処理物の洗浄施設 | 廃PCB等又はPCB処理物 | すべてのもの |
PCB汚染物又はPCB処理物の分離施設 | 廃PCB等又はPCB処理物 | すべてのもの |
注1 PCBとは、ポリ塩化ビフェニルの略称です。
施設の種類 | 処理する廃棄物の種類 | 処理能力 |
遮断型最終処分場 | 有害な産業廃棄物 | すべてのもの |
安定型最終処分場 | 安定型産業廃棄物(注2) | すべてのもの |
管理型最終処分場 | 上記2つ以外の産業廃棄物 | すべてのもの |
注2 安定型最終処分場で処理できる産業廃棄物とは、廃プラスチック類、ゴムくず、金属くず、ガラス及び陶磁器くず、がれき類で有機性の物質、油分及び有害物質を含有または付着していないものです。これらを安定型産業廃棄物といいます。
設置許可の申請はいきなりできるものではなく、自治体との事前協議が必要になります。
自治体ごとに細かい手続きに差があるので、計画段階で自治体に相談して手続きの流れを確認しておきましょう。
また、処分業の新規許可・変更許可申請にあたっては、各自治体の条例や要綱に基づく事前協議の手続きが必要です。
(東京都など更新許可申請にも事前協議が必要となる自治体もあります。)
各自治体ごとに必要な手続きや書類などに差があるので、まずはHPや窓口で確認しましょう。
6.まとめ
今回の記事では、産業廃棄物処理業の許可の種類に関する内容を取り上げました。
収集運搬業と処分業、産業廃棄物と特別管理産業廃棄物、それぞれ許可が必要になるのでご注意ください。
産業廃棄物処理業の新規取得や変更、更新に関わる許可申請は、様々な法令が関係してくるため、専門家のサポートが必要なケースが多くなります。
計画準備から最終的な許可申請まで、非常に多くのハードルを越えていく必要があります。
株式会社環境と開発は、そうした施策を各専門家と連携し一気通貫でサポートしていますので、お気軽にご相談ください。
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