産業廃棄物処分業 許可申請について

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産業廃棄物処分業の許可申請、と聞くと「最終処分場」や「焼却場」でゴミを処理する事業のための許可申請とイメージする方も多いでしょう。

また、同じような言葉で、「産業廃棄物処理業」とどう違うのか、非常にわかりにくいと感じている方も多いのではないでしょうか。

そこで、この記事では、「産業廃棄物処分業」の「許可申請」について申請の内容、流れや注意点など、具体的なご相談事例を交えながら詳しく解説していきます。

これから産業廃棄物処分業を始めたい、許可申請する前に気を付けることを確認したいという方は、ぜひ参考にしてください。

目次
  1. 「産業廃棄物処分業」と「産業廃棄物処理業」の違い
  2. 産業廃棄物処分業の事業の範囲
  3. 産業廃棄物処分業の許可申請とは?
  4. 産業廃棄物処分業許可申請の申請書類
  5. 許可申請で注意すべき欠格要件
  6. 産業廃棄物処分業許可申請までの手続きの流れ
  7. 産業廃棄物処分業許可申請のご相談事例
  8. まとめ

1.「産業廃棄物処分業」と「産業廃棄物処理業」の違い

まずは、産業廃棄物処分業の許可申請の話の前に、そもそもの言葉の定義などを説明させてください。

産業廃棄物処分業とは、産業廃棄物の処分(中間処理、最終処分)を業として行うことを言います。

では、産業廃棄物「処理業」とどう違うのか、というと・・・


「産業廃棄物処理業」は「産業廃棄物収集運搬業」と「産業廃棄物処分業」の総称です。
つまり、産業廃棄物処分業は産業廃棄物処理業の中の1ジャンルとなっています。

また、産業廃棄物収集運搬業、産業廃棄物処分業を行う際は、それぞれ業を行う区域を管轄する都道府県知事への許可申請が必要となります。



2.産業廃棄物処分業の事業の範囲

産業廃棄物処分業の事業の範囲は、大きく分けて「中間処理」と「最終処分」に分かれます。

(1)中間処理

中間処理とは、廃棄物に対し、安全化、安定化、減量化を目的として、物理的、化学的又は生物学的な手段によって変化を与える行為とされています。

中間処理を行うことには、次のような重要な目的があります。
・リサイクルできるものを増やすための前処理
・最終処分をしやすくするための前処理

実際に、中間処理を行うことで、産業廃棄物の約半分が再利用可能な資源となっています
また、最終処分場の埋立量を減らし、最終処分場の寿命を延ばす効果があります。

中間処理には、主に、破砕、焼却、脱水、中和、溶融、選別といった処理方法がこれにあたります。
尚、ここで言う「選別」とは、機械で一律に行う選別のことを指します。
中間処理前に行う手選別は積み替え保管に付随する行為という扱いとなり、収集運搬業の許可が必要であるとされていますのでご注意ください。


(2)最終処分

最終処分とは、廃棄物の中間処理を行った後に残った残さを処分することです。
廃棄物処理法において、廃棄物の最終処分とは、埋立処分、海洋投入処分、又は再生とされています。

産業廃棄物を適切に処理した上で、土の中に埋めたりすることで、産業廃棄物を保管し続ける処理方法です。
海洋投入処分は、昔はよく行われていましたが、現在では海洋汚染防止のため、かなり限定されたケースのみとなっています。

最終処分場とは、廃棄物の最終処分(埋立処分)を行う場所です。
産業廃棄物の最終処分場は以下の3タイプに分類されます。

施設の種類 特徴
遮断型最終処分場

有害物質を含む廃棄物等を埋め立てる処分場です。
コンクリートの囲いと屋根で周囲から遮断された構造をしています。

安定型最終処分場
そのまま埋め立て処分しても環境保全上支障のないものだけを埋め立てる処分場です。

管理型最終処分場

分解腐敗して汚水を生じる可能性のある廃棄物等を埋め立てる処分場です。
遮断型、安定型いずれの埋立基準にもあたらないものはここに埋め立てられます。
遮水工や浸出水の処理施設の設置が義務付けられています。
一般廃棄物の最終処分場は、管理型最終処分場と同様の構造となっています。


また、最終処分の中に「再生」があります。
再生とは有価販売の他、セメントリサイクルや燃料化等も含まれます。
中間処理を行って、埋め立てるものが出ない(全て再利用された)という行為も「最終処分が行われた」ということになります。


3.産業廃棄物処分業の許可申請

産業廃棄物処分業の許可を受けるためには、管轄する都道府県・政令市に許可申請を出す必要があります。
許可申請には以下のものがあります。
また、新規許可申請、更新許可申請、変更許可申請を行うには、申請の際に所定の手数料が必要です。

許可申請の種類 特徴 手数料
新規許可申請 管轄自治体で初めて産業廃棄物処理を業として行おうとするとき 100,000円
更新許可申請 許可の有効期間(5年)ごとの許可更新を行うとき

94,000円
変更許可申請 許可取得後に、産業廃棄物の種類の追加など、事業の範囲を変更するとき 92,000円

なお、許可申請に先立ち、産業廃棄物の処理に関しての必要な知識を修得するために、
財団法人日本産業廃棄物処理振興センターが実施する産業廃棄物処理業許可講習会を受講してください。
 →財団法人日本産業廃棄物処理振興センターのHPはこちらから
許可申請にはこの講習の修了証が必要になります。


4.産業廃棄物処分業許可申請の申請書類

産業廃棄物処分業許可申請の申請書類については、廃棄物処理法や廃棄物処理法施行規則に定められています。

ただし、施行規則に列挙されたもの以外の書類の提出を求められることもありますので行政にご確認ください。
一例として、東京都の許可申請書類は以下のとおりです。

許可申請書類(東京都 令和5年時点)
1.産業廃棄物処分業許可申請書
2.変更事項確認書・新旧役員等対照表
  (注 新規の場合は不要)
3.誓約書
4.事業の開始に要する資金の総額及びその資金の調達方法
  (注 貸借対照表、損益計算書、株主資本等変動計算書、個別注記表を添付している場合は不要)
5.資産に関する調書(個人用)
6.事業計画の概要
7.最新の定款の写し
8.法人の登記事項証明書(申請者、5%以上の株主又は出資者)
9.住民票抄本(本籍が記載されたもの・マイナンバーが記載されていないもの) ※
10.成年被後見人等に該当しない旨の登記事項証明書等  ※
11.政令使用人に関する証明書(当該使用人がいる場合) ※
12.申請者の許可証の写し(新規の場合は他道府県市のものを含む) ※
13.貸借対照表(直近3年分)
14.損益計算書(直近3年分)
15.株主資本等変動計算書(直近3年分)
16.個別注記表(直近3年分)
17.法人税の納税証明書「その1 納税額等証明用」(直近3年分)
18.所得税の納税証明書「その1 納税額等証明用」(直近3年分)
19.経理的基礎を有することの説明書(p.24)及び記載者の資格証明書、
  又は返済不要な負債の額及びその負債が返済不要であることが分かる書類(任意書式)
  (資産状況が悪いなど該当する場合のみ)
20.講習会修了証の写し

※については、
・役員等(監査役、相談役、顧問を含む)
・5%以上の株主又は出資者
・政令使用人
に該当する全員分です。

許可申請に際しては、行政窓口への申請時に内容の形式審査(書類が揃っているかの確認)後に受付となります。
申請書類に足りないものがあると、当然受付されません。
また、受付の際に申請手数料を納付する必要があるのでご用意ください。

許可申請の審査期間については、自治体による差はありますが、許可申請書受理後60日前後が多いです。
ただ、許可申請書受理後に補正書類等の提出が必要になったり、審査自体が立て込んでいる場合など
平均的な日数より長くなることも(状況によっては短くなることも)あります。





5.許可申請で注意すべき欠格要件

産業廃棄物処分業の許可申請の際に、「欠格要件」といって、これに該当すると許可が認められない、もしくは取得後に取り消されてしまう項目が廃棄物処理法第7条第5項第4号に定められています。

欠格要件とは、産業廃棄物処分業を行う人(法人含む)が適正にその事業を行うことができるか、を判断するための条件です。

対象となるのは以下のとおりです。
・個人事業主
・法人(会社自体)
・法人役員(代表取締役、取締役、執行役員)
・5%以上の株主、相談役、顧問
・政令使用人

また、欠格要件については、以下のとおりです。

1、成年被後見人・被保佐人・破産者で復権を得ない者
2、禁固以上の刑に処せられ、その執行を終わり、又は執行を受けることがなくなった日から5年を経過しない者
3、次に掲げる法令等に違反し、罰金以上の刑に処せられ、その執行を終わり又は執行を受けることがなくなった日から5年を経過しない者
  ・廃棄物処理法
  ・浄化槽法
  ・大気汚染防止法
  ・騒音規制法
  ・海洋汚染及び海上災害の防止に関する法律
  ・水質汚濁防止法  
  ・悪臭防止法
  ・振動規制法
  ・特定有害廃棄物等の輸出入等の規制に関する法律
  ・ダイオキシン類対策特別措置法
  ・ポリ塩化ビニフェル廃棄物の適正な処理の推進に関する特別措置法
 次に掲げる法律に違反した者
  ・暴力団員による不当な行為の防止等に関する法律(第31条第7項を除く。)
 次に掲げる罪を犯し、罰金以上の刑に処せられ、その執行を終わり又は執行を受けることがなくなった日から5年を経過しない者
  ・刑法第204条(傷害)
  ・刑法第206条(現場助勢)
  ・刑法第208条(暴行)
  ・刑法第208条の2(凶器準備集合及び結集)
  ・刑法第222条(脅迫)
  ・刑法第247条(背任)
  ・暴力行為等処罰に関する法律
4、次に掲げる許可を取り消され、その取消しの日から5年を経過しない者
  ・一般廃棄物収集運搬・処分業の許可の取消し
  ・(特別管理)産業廃棄物収集運搬・処分業の許可の取消し
  ・浄化槽法第41条第2項による許可の取消し  
5、法人で暴力団員などがその事業活動を支配するもの
6、暴力団員による不当な行為の防止等に関する法律に規定する暴力団員又は暴力団員でなくなった日から5年を経過しない者 
7、その業務に関し不正又は不誠実な行為をするおそれがあると認めるに足りる相当の理由がある者

欠格要件に該当する中で、環境にかかわるものや業務に関わるものは把握がしやすいと思いますが、
交通事故や脱税などで禁固以上の刑となった場合も該当します。
会社の役員や5%以上の株主の方が該当していたなど、把握が直ちに難しいこともあり得ます。
許可申請の直前に慌てることにならないようご注意ください。



 

6.産業廃棄物処分業許可申請までの手続きの流れ

産業廃棄物処分業の許可申請までの流れについて、廃棄物関係の申請全体の流れは以下のようになります。

【廃棄物処理法関係手続き】
手続開始
 → 要綱・条例等に基づく事前協議
 → 事前協議完了
 → (設置許可申請 → 
設置許可)※産業廃棄物処理施設の設置許可が必要な場合
 → 施設設置工事
 
→ (使用前検査)※産業廃棄物処理施設の設置許可が必要な場合
 → 処分業許可申請
 →  審査
 → 処分業許可
手続完了・営業開始

実は、産業廃棄物処分業許可申請の前に必要となる行政(都道府県・市町村)との事前協議が非常に重要なものです。

事前協議については、各自治体で定められた要綱や条例に必要な書類や手続きが定められています。
よく廃棄物にかかるニュースなどででてくる「住民説明」や「ミニアセス(生活環境影響調査)」がこの段階で求められます。

処分業の新規許可・変更許可申請にあたっては、各自治体の条例や要綱に基づく事前協議の手続きが必要です。
(東京都など更新許可申請にも事前協議が必要となる自治体もあります。)
各自治体ごとに必要な手続きや書類などに差があるので、まずはHPや窓口で確認しましょう。



 

7.産業廃棄物処分業許可申請のご相談事例

ここからは、株式会社環境と開発にご相談頂いた産業廃棄物処分業の許可申請に関わる事例をご紹介します。
産業廃棄物処分業の取得や変更を検討されている方は、是非参考にしてください。


産業廃棄物処分業許可申請のご相談事例①:混合廃棄物及び廃プラスチック類のリサイクル施設の整備




【ご要望】

産業廃棄物の取扱量の増加に対応するため、新たに混合廃棄物及び廃プラスチック類のリサイクル施設を整備したいとのご相談をいただきました。工場を稼働させながら新規設備の導入を進めていくため、工事を何段階かに分ける必要がありました。

【課題】
もともと他社で操業されていた工場跡地であったものの、敷地内に市道や法定外公共物が残っている、開発許可を取得せずに建築確認が取れている等、以前の許可に問題個所が多々あり、それらの問題を解決しながら、新しい施設を整備しました。

【施策】
関係法令を遵守して、廃棄物処理施設を設置したいとのご要望を頂き、以下の施策を行いました。

①どのような手続きが必要か行政と協議

②廃棄物処理法に基づく生活環境影響調査

③廃棄物処理法及び建築基準法等の関係法令手続き


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廃棄物処理施設許可申請のご相談事例②:市街化調整区域に廃棄物処理施設を新設




【ご要望】
金属系廃棄物の処理の拡充のために、2拠点目として計画を立案され、一廃・産廃処理施設と自動車リサイクル法にかかる施設を併設したいとの要望。
第1期竣工直後に起こった熊本地震を受けて、緊急かつ大量に発生する災害廃棄物の受入れに十分な規模の施設を整備したいとの要望。そのため、再度の建築基準法第51条ただし書き許可を取得するなどが必要に。

【課題】
第1期申請の際、開発が制限される市街化調整区域内での工事計画の為、建築基準法、都市計画法や廃棄物処理法など多岐にわたる法令手続きを随時進めていく必要ありました。また、計画地が過去にセメントプラントとして使われており、開発手続きと並行して土壌汚染対策法に基づく土壌調査に時間がかかりました。

【施策】
本事例では、廃棄物処理法関連の手続きのほか、以下の施策を行いました。

①建築基準法第51条ただし書き許可にかかる手続き

②市街化調整区域での開発許可にかかる協議

③工場敷地内に残っていた里道・水路の払下げ手続き

④土壌汚染対策法に基づく汚染土壌調査

 

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産業廃棄物処分業許可申請のご相談事例③:非線引き都市計画区域内での廃棄物処理施設設置



【ご要望】
新たに廃棄物処理を始めていくにあたり、適切な処理施設の計画作成や一般廃棄物・産業廃棄物両方の処理が行える施設の許可を取得したいとのご相談をいただきました。

【課題】
木くず破砕施設の設置のための廃棄物処理法に基づく産業廃棄物処理施設設置許可の取得が必要でした。
また、事業計画地は非線引きの都市計画区域内の土地となるため、廃棄物処理施設の設置には建築基準法第51条ただし書き許可の取得、3,000㎡以上の土地の開発には都市計画法の開発許可がそれぞれ必要となりました。さらに、開発許可については、別の工場用地として大津技研様で以前に開発許可を取得され、計画途中で断念された経緯があり、開発許可の変更手続きが必要でした。

【施策】
本事例では、廃棄物処理法関連の手続きのほか、以下の施策を行いました。

①建築基準法第51条ただし書き許可にかかる手続き

②開発許可の変更にかかる手続き

 

→ 産業廃棄物処分業許可申請の本事例のページはこちら



8.まとめ

今回の記事では、産業廃棄物処分業の許可申請に関する内容を取り上げました。
産業廃棄物処分業の許可申請の流れや内容、注意すべき点を網羅的にお伝えしてきました。
また、産業廃棄物処分業に許可申請に関するご相談事例についてもあわせてご紹介しました。

産業廃棄物処分業の新規取得や変更、更新に関わる許可申請は、様々な法令が関係してくるため、専門家のサポートが必要なケースが多くなります。
設置準備から最終的な許可申請まで、非常に多くのハードルを越えていく必要があります。
株式会社環境と開発は、そうした施策を一気通貫でサポートしていますので、お気軽にご相談ください。

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公益財団法人 産業廃棄物処理事業振興財団
公益財団法人 日本産業廃棄物処理振興センター
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