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廃棄物処理法 処理施設の規制の変遷

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廃棄物処理法は1970年に制定されました。
成立から50年以上経ち、時代に応じた内容となるよう改正を経てきています。

元々は前身となる「清掃法」が戦後の1954年に定められ、環境衛生対策が主な課題でした。
その後の高度成長時代、それに伴う公害の問題、大量生産大量消費、
循環型社会、リサイクル、温暖化対策、災害廃棄物対策と規制は変化しています。

そこでこの記事では、廃棄物処理法による処理施設の規制の変遷について詳しく解説していきます。
各手続の経緯などを学べますので、ぜひご覧ください。

目次
1.産業廃棄物処理施設の規制は初めは「届出」だった
2.1970年(昭和45年) 廃棄物処理法制定
3.1976年(昭和51年)改正 ~最終処分場の規制対象追加~ 
4.1991年(平成3年)改正 ~処理施設の規制が許可制に~ 
5.1997年(平成9年)改正 ~最終処分場は「すべての施設」が規制対象に~
6.その後 ~規制対象施設の追加や制度創設など~
7.まとめ


1.産業廃棄物処理施設の規制は初めは「届出」だった

産業廃棄物処理施設の規制は、現在は「許可制」として許可を得てから設置が可能なものとなっています。
ただ、これは最初からではなく、むしろ最初は「届出制」でした。

廃棄物関係については、1954年に清掃法が定められました。
このころの清掃事業については市町村を中心とした対応でしたが、産業の発展に伴う廃棄物の増加や内容の変化に対応しきれなくなってきました。

その後、1970年の廃棄物処理法では、廃棄物の区分が定められ、一般廃棄物と産業廃棄物に分けられました。
一般廃棄物は市町村が処理責任を、産業廃棄物は排出事業者が処理責任を有することになり、
産業廃棄物『処理業』が許可制となりました。
産業廃棄物『処理施設』は届出制となっていました。
処理施設が許可制となったのは、1991年の改正になってからでした。

高度成長に伴う産業廃棄物の増大と公害の顕在化から定められた廃棄物処理法でしたが、
当時は『処理業』を許可制にすることで十分と考えられたのかもしれません。
その後の変遷を大きな法改正の動きに合わせて見ていきたいと思います。



2.1970年(昭和45年) 廃棄物処理法制定

1970年の廃棄物処理法制定時は、廃棄物処理施設は届出制でした。
その当時の対象となった施設は次の処理施設です。

施設の種類 処理する廃棄物の種類 処理能力
脱水施設 汚泥 1日当たり10立方メートルを超えるもの
乾燥施設


汚泥


1日当たり10立方メートルを超えるもの
(天日乾燥)1日当たり100立方メートルを超えるもの
焼却施設 汚泥 1日当たり5立方メートルを超えるもの
廃油 1日当たり1立方メートルを超えるもの
廃プラスチック類 1日当たり100kgを超えるもの
油水分離施設 廃油 1日当たり10立方メートルを超えるもの
中和施設 廃酸・廃アルカリ 1日当たり50立方メートルを超えるもの
破砕施設 廃プラスチック類 1日当たり5tを超えるもの
コンクリート固型化施設 有害物質を含む汚泥 全てのもの
ばい焼施設 水銀又はその化合物を含む汚泥 全てのもの

 


対象となる施設は10施設となっています。(現在は18施設)
焼却施設には火格子面積の条件もありません。
また、中間処理施設のみで最終処分場も入っていません。
(当然、当時も埋立処理は行われていました。)

また、届出制といっても、水質汚濁防止法や他の環境関係の法令にあるようなものではありませんでした。
・一定の審査期間がある(30日や60日)
・審査の結果、計画変更命令を出すことができる
・審査期間が終わらないと設置ができない
上記のような届出ではなく、単純な「届出制」だったようです。
そのため、その後の規制強化で変更されます。



3.1976年(昭和51年)改正 ~最終処分場の規制対象追加~

1976年の改正で、廃棄物規制の強化のため大きく2つの修正がありました。
それが、①計画変更命令の付いた届出制への変更と②最終処分場の対象追加です。

①の届出制の変更については、むしろ1970年の時点で水質汚濁防止法でも取られていた方式なので、
同等の規制になったと考えていいでしょう。

②の最終処分場の対象追加については、廃棄物処理法施行令7条が改正され、中間処理施設にPCB汚染物・処理物に関係する施設の追加と最終処分場が「産業廃棄物処理施設」として新たに規制対象となりました。
また、最終処分場の構造基準と維持管理基準等もこの時に制定されています。

当時の最終処分場は現在と違い、以下のような施設が対象でした。

施設の種類 対 象
遮断型最終処分場 全ての施設
安定型最終処分場 面積が3,000㎡以上のもの 
管理型最終処分場  面積が1,000㎡以上のもの 

安定型と管理型の最終処分場については、規制未満の施設であれば、届出制の対象にならない状況でした。
そのため、規制未満に切り分けられた施設も多く作られることになりました。
この状況が1991年まで続くことになります。



4.1991年(平成3年)改正 ~処理施設の規制が許可制に~

1991年の改正で、産業廃棄物処理施設が許可制となりました。
改正された廃棄物処理法15条では以下のように定めています。
1項 都道府県知事の許可を受けなければならない
2項 技術上の基準などの基準明示
3項 生活環境保全上必要な条件を付することができる
4項 適合検査に合格が必要
5項 (以前からの)維持管理基準

実質的にそれまでの届出制と同様に申請に対して審査が行われ、計画変更命令を出す、審査して問題がなければ設置ができる、ということでは大きく変わりません。

変わった点として、「許可制」となることで、一般的には禁止されている、制限されている行為に対して、許可を得ることで可能になるという仕組みになっています。
そのため、①許可は取消がある、②条件付きの許可が可能
という点が規制としての届出制との大きな違いとなりました。

また、このときに設備の規制に関連するもので、特別管理廃棄物制度が導入されています。
設備以外としては産業廃棄物処理業の許可更新制度がこのときに始まっています。



5.1997年(平成9年)改正 ~最終処分場は「すべての施設」が規制対象に~

不法投棄などの不適正処理が続き、最終処分場や廃棄物処理施設の設置に関して住民からの不信が高まっていました。
また、ダイオキシン問題も注目される中で、1997年の改正で総合的な対策が取られました。

施設関係では、1997年の改正で最終処分場は規制対象が「すべての施設」となっています。
これで、最終処分場の規模による定めの撤廃、ミニ処分場に対する規制が強化されました。

その他、設置許可手続きの明確化として、以下のことが定められました。

・設置者への生活環境影響調査の義務化
・計画が周辺地域の生活環境の保全について適正な配慮がなされたものであることを許可要件に追加

最終処分場及び焼却施設について、
・申請書等の告示・縦覧
・利害関係を有するものの意見聴取
・専門的知識を有するものからの意見聴取

また、ダイオキシン類の規制のため、焼却施設の構造・維持管理基準の見直し、小規模施設に対する規制強化のための許可対象範囲の見直しが行われています。



6.その後 ~規制対象施設の追加や制度創設など~

その後の廃棄物処理施設関係の改正内容です。

①2000年(平成12年) 処理施設の設置に係る人的要件の追加、譲り受けの許可制の創設

②2001年(平成13年) 産業廃棄物処理施設の追加
 ・木くず又はがれき類の破砕施設 1日当たりの処理能力が5tを超えるもの
 ・規制対象にPCB処理物を追加

③2002年(平成14年) 産業廃棄物処理施設の追加
 ・ダイオキシン類を含む汚泥のコンクリート固化施設 すべてのもの

④2003年(平成15年) 同様の性質を有する廃棄物の処理施設の設置許可の合理化
 
⑤2004年(平成16年) 最終処分場の跡地等で土地の形質変更を行う際の事前届出制度の創設

⑥2010年(平成22年) 廃棄物処理施設の設置者に対し、都道府県知事による施設の定期検査の義務付け

⑦2015年(平成27年) 災害時における廃棄物処理施設の迅速な新設又は柔軟な活用のための手続を簡素化

この他、各種リサイクル法等の制定など、循環型社会への方策や災害時対応のために改正が続いています。



7.まとめ

産業廃棄物処理施設の規制対象施設については、現在は以下のようになっています。

処理施設の種類 対象規模 備考
1.◎汚泥の脱水施設 ◎処理能力 10 m3/日 を超えるもの  
2.◎汚泥の乾燥施設 天日乾燥以外 ◎処理能力 10 m3/日 を超えるもの  
天日乾燥 ◎処理能力 100 m3/日 を超えるもの  
3.◎汚泥の焼却施設  次のいずれかに該当するもの
◎処理能力 5 m3/日 を超えるもの
ロ 処理能力 200 kg/時間 以上のもの
ハ 火格子面積 2 m2 以上のもの
PCB汚染物及び
PCB処理物であるものを除く
4.◎廃油の油水分離施設  ◎処理能力 10 m3/日 を超えるもの  
5.◎廃油の焼却施設 次のいずれかに該当するもの
◎処理能力 1 m3/日 を超えるもの
ロ 処理能力 200 kg/時間 以上のもの
ハ 火格子面積 2 m2 以上のもの
廃PCB等を除く
6.◎廃酸又は廃アルカリの中和施設 ◎処理能力 50 m3/日 を超えるもの 中和槽を有するものであること
放流を目的とするものを除く
7.◎廃プラスチック類の破砕施設 ◎処理能力 5 t/日 を超えるもの  
8.◎廃プラスチック類の焼却施設 次のいずれかに該当するもの
(1) ◎処理能力 100 kg/日 を超えるもの
(2) 火格子面積 2 m2 以上のもの
PCB汚染物及び
PCB処理物であるものを除く
8の2.木くず又はがれき類の破砕施設 処理能力 5 t/日 を超えるもの 事業者が設置する移動式のものを除く
9.政令別表第3の3に掲げる物質又はダイオキシン類を含む◎(汚染物質を含む)汚泥のコンクリート固型化施設 ◎全てのもの  
10.◎水銀又はその化合物を含む汚泥のばい焼施設 ◎全てのもの  
11.汚泥、廃酸又は廃アルカリに含まれるシアン化合物の分解施設  全てのもの  
11の2.廃石綿等又は石綿含有産業廃棄物の溶融施設 全てのもの  
12.廃PCB等、PCB汚染物又はPCB処理物の焼却施設 全てのもの  
12の2.廃PCB等又はPCB処理物の分解施設 全てのもの  
13.PCB汚染物又はPCB処理物の洗浄施設又は分離施設 全てのもの  
13の2.産業廃棄物の焼却施設
(上記 3、5、8、12に掲げるものを除く)
次のいずれかに該当するもの
(1) 処理能力 200 kg/時間 以上のもの
(2) 火格子面積 2 m2 以上のもの
 

 

14.最終処分場 イ. 遮断型最終処分場 全てのもの 政令第6条第1項第3号ハ(1)から(5)まで及び第6条の5第1項第3号イ(1)から(6)までに掲げる特定の有害産業廃棄物
ロ. 安定型最終処分場 全てのもの
(水面埋立地を除く)
政令第6条第1項第3号イ(1)から(6)までに掲げる安定型産業廃棄物
ハ. 管理型最終処分場

全てのもの イ、ロ以外の産業廃棄物

※◎にしたものが廃棄物処理法成立当初のものです。

新たな処理技術の進展や新たな規制物質の発見に伴い、処理施設に関しての規制は今後も続いていくと思われます。
状況によっては現在の「許可制」から一定の地域での「禁止制」に規制が厳格化されることもあり得なくはありません。
今後も規制、法令の変更についてアンテナを高くしておく必要があります。

産業廃棄物処理施設の設置や更新は、様々な法令が関係してくるため、専門家のサポートが必要なケースが多くなります。
設置準備から最終的な手続きまで、非常に多くのハードルを越えていく必要があります。
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