産業廃棄物処理施設に求められる脱炭素化とは?~「脱炭素化中長期シナリオ」の産業廃棄物に関する内容に特化して経験豊富な専門家が解説します!~

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このブログは、令和4年2月17日に開催された、産業廃棄物処理事業経営相談会オンラインセミナーで講演した
「産業廃棄物処理施設の脱炭素化と事業継承・M&Aにおける産業廃棄物処理施設の注意点」の内容を抜粋して掲載しています。


題  目:「産業廃棄物処理施設の脱炭素化と事業承継・M&Aにおける
      産業廃棄物処理施設の注意点」

講  師:株式会社環境と開発 代表取締役 田邉陽介


目  次



1.産業廃棄物処理施設の脱炭素化とは?

今回の「脱炭素化」について、ステップを踏んでご説明いたします。

まず、環境省が昨年発表した脱炭素化中長期シナリオの中で、特に産業廃棄物関連に関する事項をピックアップして、どのようなことが書かれていたのかを皆さんと共有したと思います。

その後、それ以外の事項も含めて、今後、廃棄物処理施設に対してどのようなアプローチをしていくのか整理をしてご説明いたします。

すでに「脱炭素化中長期シナリオ」について読んでいらっしゃる方は、また、この話かと思われるところもあるかと思いますが、抜粋して産業廃棄物に関するところだけお話ししてまいりますので、復習していただければと思います。

 正式名称は『廃棄物・資源循環分野における2050年温室効果ガス排出実質ゼロに向けた中長期シナリオ(案)』この時点では、(案)ということ出ています。

これは、令和3年8月5日に環境省が作成したものですが「中央環境審議会」というところの審議にかけるために作成されたものなので(案)という記載になっています。

これからいろいろな業界の検討を踏まえて、このシナリオを書き換えて、最終的に発表されることになりますが、そのベースになるものとして、今回は説明させていただきます。


1)知っていますか?廃棄物分野の温室効果ガス排出量の半数は、焼却と原燃料利用です!

まず、最初に背景からご説明いたします。
令和2年に『2050年カーボンニュートラル、脱炭素社会の実現を目指す』ということで、当時の菅総理が宣言をしました。さらに昨年4月に2030年度に温室効果ガスを2013年度比46%削減という途中の目標も公表され、これら2つを踏まえながら特に廃棄物循環資源分野でどのようなことをやっていくのか、これは実際各分野で検討が進められていますが、その分野の中でも廃棄物循環資源分野、廃棄物処理業でどのようなことが必要になるかを策定したものが資料1になります。

これは全体像ですが、【分野別】の温室効果ガス全量のうち、廃棄物分野が40MtのCO2を排出しています。その中の77.8%が二酸化炭素(CO2)、10.4%が一酸化二窒素(N2O)、メタン(CH4)が11.7%になっています。発生源で見ると、焼却が30数%、原燃料利用が半分でこれが一番大きく、その他、排水処理や埋立に伴って発生するものが20%弱で、焼却と原燃料利用が大半を占めています。
結論でいうと、廃棄物の焼却及び原燃料利用のこの部分がかなり大きいので、ここに手を打っていくということです。見ていただいてわかる通り、埋立は、ずっと下がっています。これは埋立量が減っているので下がっていますが、埋立でなぜ温室効果ガスが発生するのかというと、有機物の分解によるメタンの発生、あとは排水処理施設の運営で発生しています。
「焼却と原燃料利用の発生に手を打ちましょう。」というのがメインのシナリオになっています。

さらに、今の2つの中で、何から発生しているのか、品目別に示したものが資料2です。
約半分が廃プラスチックで、廃油が35%くらい、RDF・RPFこれは廃プラや木くずを燃料化した数値がここに入っているので、RDF・RPFの数値は、廃プラスチックには含まれていません。


このような割合になっているということ知っておいてください。
結果的に「廃プラスチック、廃油に手を打ちましょう。」ということになります。
資料3は、さらに中身を詳しく見ているものになります。


廃プラスチックの焼却・原燃料利用の中でも、4割くらいは一般廃棄物で、残りが産業廃棄物になっています。その他は、高炉や焼成炉(セメント)から出ているものになります。
今回は廃棄物処理業者様向けの話になりますので、産業廃棄物の部分で最終的には、焼却の産業廃棄物の話になります。
廃油に関しては、焼却(熱回収含む)が4割くらい、燃料として使用が半分くらいになります。燃料として使用されている分については良いともいますが、残りの焼却(熱回収含む)、特管の焼却について手を加えていくということが問題になってくると思います。



2)重点対策領域の3つの方向性とは?

今の施策に対して、重点対策領域というものが定められています。(資料4)

対策の方向性が大きく3つに分かれていて、この3つの対策に対してそれぞれ分類が示されています。これを見るだけでは分かりにくいと思いますので、後ほど細かく見ていきます。

廃プラスチックに関することや廃油に関すること、特にCO2の排出量が大きいところに対して主に施策が打たれています。これから読み進める上で、違いだけを把握していただきたいと思います。





3)2050年までに温室効果ガス排出量を「0」にするためのシナリオとは?

資料5は、中長期シナリオとありますが、国も色々な想定をしており、「BAUシナリオ」は、現況(2019年度)のままいった場合、2050年を迎え時にどうなるかのベースになるものが、33,000万トンの二酸化炭素が出ると言われていています。目標としてはこれを「0」にしましょうということで、色々なシナリオを組んでいます。「計画シナリオ」「拡大計画シナリオ」「イノベーション実現シナリオ」「イノベーション発展シナリオ」「実質排出ゼロシナリオ」これが目標値です。2050年度の目標を「0」にするためには「実質排出ゼロシナリオ」をやらないと「0」にはならないということです。

「最大対策シナリオ」は、できる対策を全て行うとマイナスになるというのがもう一つのシナリオになっています。

このシナリオの中でどこまでやるかということですが、本当に「0」にするためには、実施排出ゼロシナリオを実施しないといけないことになります。

これから細かな資料になりますが、実質排出ゼロシナリオを実施しないと「0」にならないということを知った上で見ていただきたいと思います。



4)資源循環を通じた素材ごとのライフサイクル全体の脱炭素化とは?

資料6「資源循環を通じた素材毎のライフサイクル全体の脱炭素化」は、更に細かくなりますが、左の列は、資料5の「計画シナリオ」「拡大計画シナリオ」「イノベーション実現シナリオ」「イノベーション発展シナリオ」「実質排出ゼロシナリオ」「最大対策シナリオ」と同じ記載にしてあり、「0」にするためには「実質排出ゼロシナリオ」まで、「重点対策領域」の内容を上から順にプラスしていくというように見ていきます。
「0」にするためには、「実質排出ゼロシナリオ」までの重点対策領域を上からすべて実施していかないといけないということです。

料6「重点領域Ⅰ資源循環を通じた素材ごとのライフサイクル全体の脱炭素化」の施策ですが、赤線部分が、産業廃棄物に関するところです。

例えば、プラスチックは、かなりの量をバイオマスプラスチックに変えていくことを見込んでいます。後ほどグラフでも説明いたしますが、我々産業廃棄物処理業界がやるというよりは、プラスチックを製造しているメーカー側が、現在、石油から製造しているプラスチックを、バイオマスからの製造に変えていき、その分の量を増やすことで結果的に、廃棄物処理の時にCO2が出ない。ということです。実際は、二酸化炭素がでるのですが、「実質排出0」にしていきますよ。ということで、このことがかなりの量を占めていています。この部分は、我々産業廃棄物処理業界ができることではなく、我々がお手伝いできることで言うと、実は今まで通りで、MR(マテリアルリサイクル、(CR(ケミカルリサイクル)で、マテリアルリサイクルとケミカルリサイクルを推奨しましょう。ということになります。

下に書いてある「実排出ゼロシナリオ」は、割合ですね、ケミカルリサイクル70%だったのを90%までもっていかないといけませんよ。バイオマスプラスチックは、2030年に200万トンを2050年に250万トンにしないといけない。2045年バイオマス割合100%になっているので、100%バイオマスプラスチックになっていないと「実排出0」にならないということを示している資料になります。

廃油も廃油溶剤をまずはマテリアルリサイクルに回しましょう。現在焼却されている廃油をマテリアルリサイクルに回しましょう。ということがほとんどの施策になっています。



5)地域の脱炭素化に貢献する廃棄物処理システムの構築

資料7「地域の脱炭素化に貢献する廃棄物処理システム構築」は、わりと皆さんに関係してくるところになるかと思います。「重点対策Ⅱ地域の脱炭素化に貢献する廃棄物処理システム構築」ということで二つ目の施策になります。

まず食品廃棄物、産廃でいう動植物系残渣の発生をまずは半減させる。という設定になっていて、食品ロスを減らしましょうというものです。半減しますよということなので、食品廃棄物を扱っていらっしゃる方は、今後、削減していくということを前提に事業を組み立てなければいけない。ということになります。

次に埋立の回避については、有機性廃棄物の埋立量をとにかくなくす、直接埋立をなくす。ということになっています。今は、かなり少なくなっていると思いますが、目標としては2035年までに今、直接埋立している動植物性の残渣、紙くず、天然繊維くず、木くず、家畜糞尿を、必ず焼却したうえで埋立てましょう。ということです。直接埋立をするとメタン発酵に繋がります。

次の列も同じような話ですが、有機性汚泥や下水汚泥の生埋立をゼロにしましょう。焼却処理をしたうえで埋立てましょうということです。焼却処理をしている方からすると、このあたりが焼却対象になり、バイオマス発電の燃料として一旦流れていく。ということが進んでいくことが読み取れます。

次の列は、一般廃棄物のことしか書いていないので、赤線が入っていません。



6)廃棄物処理施設・車両等の脱炭素化 

資料8「廃棄物処理施設・車両等の脱炭素化」は、3つ目の施策で、「重点対策領域Ⅲ廃棄物処理施設・車両等の脱炭素化」です。
これは施設に関する内容です。処理施設に対してどのような施策を打っていくのかということです。この表は、明確に一般廃棄物処理施設と産業廃棄物処理施設が分かれていますので、産業廃棄物の列を見てください。

まず、結構これは、達成できるか?と思うところがありますが、2035年度までに廃プラスチック類を焼却する全ての施設においてエネルギー回収が行われていると想定されています。
これから先13年くらいしかないのですが、その間にすべての施設でエネルギー回収がされているということです。現状まだまだ、エネルギー回収なしで稼働されているところもありますので、後付けで実施していくということも想定されているとおもいますが、処理施設として大きいのは、計画シナリオの段階で100%になっている。ということです。
産廃の運搬車両については、2040年度までに全ての産業廃棄物収集運搬車両がEV電気自動車に置き換わる。という想定もされています。
これもどちらかというと、自動車メーカーがしっかり対応してもらわないといけないということになります。実施する皆さんが保有している車両をすべてEVに買い替えないといけないという想定になります。
もう一つは、「実質排出0」の一つ前の段階になりますが、産業廃棄物処理施設(最終処分場の重機等を含む。)で使用する燃料が全てバイオマス由来燃料に置き換わるということが想定されています。バイオマス由来というのは、水素等も含めてCO2を出さない燃料という使われ方です。これらの中長期シナリオが想定されているということを頭においていただき、今あるすべての施策を実施すると2050年度までに「実質0」を達成できます。ということになっています。



7)2050年までに廃棄物分野における温室効果ガス排出量「0」を目指して



私も最初読みながら思ったのですが、色々な方とお話しする中で、誤解されることが多いので、解説させていただきます。資料9を見ると、2050年度までに温室効果ガスが下がります。となっていますが、メインは、最初に説明した、素材のバイオマス化、石油から製造されていたプラスチックを、バイオマスから製造されるプラスチックに置き換えていくことで、結果的に二酸化炭素排出量が減るという割合がかなり含まれており、あとはマテリアルリサイクル、ケミカルリサイクルに回ることで減る分がありますが、かなりの割合で素材バイオマス化によって、実質二酸化炭素排出量が減ることになっています。

廃棄物発電・熱利用が下がっていくように書いてありますが、これは誤解があって、実は、発電量でいうと先ほどあったように2035年度までに、すべての廃棄物焼却施設で発電がされるようになると、右肩上がりになっていきます。廃棄物発電・熱利用は右肩上がりになりますが、ここ言っているのは、発電によってほかの電気を使わないため、二酸化炭素の削減できる量として計算できるものが、廃棄物発電・熱利用分の量になりますということです。

発電量は増えるのですが、廃棄物発電・熱利用分がマイナスになります。二酸化炭素は出ているが、発電に使ったから実質出てないように引き算します。というための数値で、これは効果として減っていくという意味で減らしてあります。

後半は、CCUSといって温室効果ガスの吸収する、処理する施設が増えていってその分の吸収量が計算されています。

ここは誤解が生じやすいところなのですが、廃棄物発電がなくなるわけではなく、発電は増えるが、電気がほとんどバイオマス化されるので電気のCO2排出量、吸収量が0になっていくという計算なので、このような表になっているということです。誤解がないように見ていただきたいと思います。

ここまで、環境省が出している資料を基に説明させていただきました。



2.おまけの話~炭素税~

先日経営塾のOB会での温室効果ガス関係の話があったので少し付け加えをさせていただきます。

資料5「廃棄物・資源循環分野の中長期シナリオと温室効果ガス排出量の見通し」の発想ですが、

2050年度実質温室効果ガス排出0を目指していくわけですが、実際、廃棄物発電は、物は燃やすことで二酸化炭素が出ることに変わりはないのですが、色々な理屈で相殺して0の扱いにしょうというのがこの計画なのですが、実際CO2は出ているので、出ているものに対して炭素税がかかってくる可能性はかなりあるのではないかと思っていて、そのあたりが皆様の処理事業の中で処理費に反映されたり、排出事業者様への影響がでたり、この中長期シナリオには書かれていませんが、実際には出てきますし、CO2もでます。

実はRPF等も同様で、熱源としてリサイクルはしていても、結局は、燃料として燃やされてCO2がでることに変わりはないので、ここでは想定されていない規制が世界的にも出てくる可能性があるのではないかとう話が出ていました。

本日お話ししたことは、今、環境省が出しているシナリオ上で想定されている2050年の話で、もっと外部の圧力がかかってくると、そもそも、もっと違った規制がかかってくる可能性があるということは認識した上で、日々情報を収集にあたられたらどうかと昨日の話を聞いて思ったところです。




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