産業廃棄物処理施設の処理能力について ~算出の仕方と注意点について解説~

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産業廃棄物処理施設で設置許可や処分業許可を取得する際に、「処理能力」が重要になります。

産業廃棄物の処理能力が一定のラインより大きければ設置許可が必要になったり、
産業廃棄物の処理能力を増大させるような変更は変更許可が必要になったりします。

設置する機械・処理設備を製造しているメーカーさんによって処理能力が示されていると思いますが、
実は、産業廃棄物処理に関する許可申請で、「処理能力の算定の仕方」にはいくつかの特殊なルールがあるのです。

そこで、産業廃棄物処理施設の処理能力や許可申請時の注意点について、
許可申請で間違いなく進められるように詳しく解説していきます。ぜひご覧ください!



目次
1.処理能力の算出の仕方 ~カタログ値と8時間未満稼働に注意!~
(1)定格標準能力とは
(2)施設の稼働時間とは
2.中間処理施設の処理能力
3.最終処分場の処理能力
4.産業廃棄物処理施設の処理能力を示す資料が何もない場合
5.許可申請のときの処理能力や稼働時間をどう決めるか
6.まとめ


1.処理能力の算出の仕方 ~カタログ値と8時間未満稼働に注意!~

産業廃棄物処理施設の処理能力は、一般的には以下のように計算します。

 処理能力 = 施設の稼働時間 × 定格標準能力 


例えば、破砕機の処理能力の場合、

 稼働時間 8時間 × 定格標準能力 30t/時 = 処理能力 240t/日

となり、許可証などに240t/日といった感じで記載があると思います。


ここで、用語の意味を改めて説明したいと思います。


(1)定格標準能力とは

定格標準能力は、施設設置者が処理する廃棄物での処理能力値を用いて計算したものです。

「処理する廃棄物」とあるように、処理する産業廃棄物の種類ごとに計算したものになります。

<産業廃棄物の一覧>

あらゆる事業活動に伴うもの 1.燃え殻
2.汚泥
3.廃油
4.廃酸
5.廃アルカリ
6.廃プラスチック類
7.ゴムくず
8.金属くず
9.ガラスくず・コンクリートくず及び陶磁器くず
10.鉱さい 
11.がれき類
12.ばいじん
特定の業種や施設から排出されたもの 13.紙くず
14.木くず
15.繊維くず
16.動植物性残さ
17.動物系固形不要物
18.動物のふん尿
19.動物の死体
20.コンクリート固形化物など、上記の産業廃棄物を処分するために処理したもので、1~19に該当しないもの



例えば、破砕機の処理能力だと、

定格標準能力
プラスチック類 30.0t/時
木くず 25.7t/時
紙くず 47.1t/時

上のように、種類ごとに定格標準能力が示されています。

ここで気を付けてほしいのが、処理機械のカタログやパンフレットに載っている簡略的な能力値です。
これは、処理機械のメーカーごとに出した標準的な値で算出されたものであることが多いので、実際の処理能力と異なることがあります
(品目に関係なくまとめて記載されているものがあります。)

ただ、許可申請に必要な算出の仕方はこのような形です、ということであり、
あくまで機械としての処理能力を表すものとして、カタログ値が誤っているものということではないです。

また、許可申請のために、メーカーに依頼して作成された「処理能力計算書」については、
処理予定の産業廃棄物の種類に合わせた正確な能力を示したものなので、問題ありません。

いわゆる「カタログ値」にだけ注意してください。



(2)施設の稼働時間とは

産業廃棄物処理施設の稼働時間は、実際に施設を動かす時間(実稼働時間)となるのが基本です。
そして、処理能力は1日あたりの定格標準能力で示します。

ここで気を付けてほしいのが、実稼働が8時間未満の場合です。

能力算定に用いる稼働時間は、実稼働が8時間未満のものについては、「稼働時間を8時間として」算定することになるのです。

破砕機を2時間しか動かさないとしても、

 ×  30t/時×2時間 で 処理能力は 60t/日 

ではなく、

 〇  30t/時×8時間 で 処理能力は 240t/日

という処理能力になります。

これは、産業廃棄物処理施設が設置許可に該当しないように、
短時間動かすだけということにして1日の処理能力を5t未満にするようなことを認めない、という意味もあります。

8時間分の処理能力が許可における最小の単位となるということに注意してください。




2.中間処理施設の処理能力

産業廃棄物処理施設のうち、中間処理施設の処理能力は先ほどお伝えした内容と同じです。

 処理能力 = 施設の稼働時間 × 定格標準能力

となります。


<許可証の記載の仕方>

産業廃棄物処分業許可証や設置許可証は、都道府県等によって様式や書式が微妙に異なることがありますが、
記載される基本的な内容は変わりません。


1日あたり処理能力 (稼働時間)(処理品目)などが表示されています。


 ○○t/日(稼働時間△△時間)

 ○○t/日(□□t/時×△△時間)

 ○○t/日(木くず)      など   



また、中間処理施設の処理能力について、
基本的には、 「処理能力」=「投入する廃棄物量の最大量」とも考えられます。

ここで注意したいのが、汚泥の脱水施設(フィルタープレスなど)のカタログ値です。



フィルタープレスのカタログで、処理能力を処理後の脱水汚泥で示したものが以前ありました。
(あくまで数字は仮ですが、カタログ値では8㎥/回と表現されていた。)

これは、あくまでカタログ値で産業廃棄物処理施設の処理能力とは別のものとして理解をお願いします
脱水施設に限らず、他の中間処理施設でもありえなくはないので、ご注意ください。





3.最終処分場の処理能力

産業廃棄物処理施設のうち、最終処分場の処理能力は中間処理施設と異なります。

最終処分場の処理能力は、

  産業廃棄物の埋立処分の用に供される場所の面積・埋立容量

となります。

どれだけ埋め立てられるか、最終処分する能力があるか、というのを示す内容です。



<許可証の記載の仕方>

産業廃棄物処分業許可証や設置許可証は、都道府県等によって様式や書式が微妙に異なることがありますが、
記載される基本的な内容は変わりません。
都道府県によって、事業敷地の面積も許可証に載っていたりします。


埋立面積 ○○○平方メートル

埋立容量 △△△△立方メートル   








4.産業廃棄物処理施設の処理能力を示す資料が何もない場合

産業廃棄物処理施設の設置許可申請や処分業の許可申請の際に、必要となるのが処理施設の処理能力計算書です。
基本的には、施設・機械のメーカーに依頼して能力計算書を用意してもらうことが多いです。


許可申請時に行政からの申請書類の指摘でよくあるのですが、

・許可申請内容と処理する廃棄物の種類や稼働時間に誤りがないか

・計算式や機械の型番などの記載ミスがないか

というようなことを、受け取ったあとに確認しておくのが大事です。



また、能力計算書がなにかしら用意出来ればいいのですが、能力計算書を用意できないこともあります。

理由としてよく聞くのが、

△メーカーでないところから中古で機械を購入して、メーカーとのつながりがない

△メーカーから買ったものだが、メーカーが倒産している

△海外のメーカーの機械で、代理店と連絡がつかなくなってしまった

といったものがあります。

メーカーとつながりが無い場合は、とにかくメーカーと連絡をとってみることからです。
倒産した場合は引き継いだメーカーがないか、など探してみることもまずは必要です。

ケースによってさまざまだと思いますので、困った場合はまずは専門家にご相談ください。

→問い合わせ・ご相談はコチラから




5.許可申請のときの処理能力や稼働時間をどう決めるか

産業廃棄物処理施設の許可申請にあたって、事前の計画での処理能力や稼働時間をどう想定するかが大事です。

理由としては、
許可取得後の処理能力の増加については、10%を超える変更は軽微変更届ではなく、変更許可申請が必要になるからです。

軽微変更届であれば、事前の説明を含めても1ヶ月あれば終わるものが、
変更許可申請となると、事前協議から必要な場合、1年近く(自治体によってはそれ以上)必要になります。
(建築基準法第51条ただし書き許可を取っている場合はその変更も加わってきます。)


特に、稼働時間については、
8時間稼働 → 12時間稼働でも10%を超えることになります。

その意味では、数年後に稼働時間の延長を考えているのであれば、
実施は後でも許可を取っておくということも検討していいかと思います。

実際に、24時間稼働を1年後を目途に見据えて、1年間は12時間稼働を予定していた産業廃棄物処理施設がありました。
許可申請時に稼働時間は24時間として申請した施設もあります。
(当然、行政との事前協議や住民説明でも、まずは12時間稼働で後ほど24時間で稼働ということは説明します。)


ただ、このときに重要になるのが、以下の点です。
〇生活環境影響調査や環境アセスメントで調査範囲が増える
〇早朝や夜間の稼働ということで、周辺環境に影響が無いような設備・運用が必要
(特に騒音の夜間の規制はかなり厳しいです。)
〇人員の確保   など

産業廃棄物処理施設の許可手続きは時間的に長くかかるものなので、
先を見据えた内容にしていきましょう。




6.まとめ

産業廃棄物処理施設の処理能力について、いくつかの視点からまとめてみました。

廃棄物処理施設の処理能力は、許可にかかるかどうかという意味でも重要になりますが、
なによりも事業の規模や内容に関わってくるものです。

新たにに設置する場合は、産業廃棄物処理施設のメーカーさんとも話をしながら進めていくと思いますが、
産業廃棄物処理施設の新設には、様々な法令が関係してくるため、専門家のサポートが必要なケースが多くなります。

株式会社環境と開発は、長年のコンサルティング経験を活かしたサポートをしていますので、
産業廃棄物処理施設の計画策定や許認可にお困りの際はお気軽にご相談ください。


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~お役立ち情報~












環境省
国土交通省
公益財団法人 産業廃棄物処理事業振興財団
公益財団法人 日本産業廃棄物処理振興センター
公益財団法人 廃棄物・3R研究財団
一般社団法人 廃棄物資源循環学会

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