廃棄物処理法等におけるアナログ規制(目視規制、定期検査・点検規制など)の見直しについて

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「デジタル原則に照らした規制の一括見直しプラン」(令和4年6月3日デジタル臨時行政調査会決定)
及び
「デジタル社会の実現に向けた重点計画」(令和4年6月7日閣議決定)
において、色々な分野での規制見直しが進められています。

廃棄物関係についても、令和5年3月31日環境省通知で規制の見直しが示されました。

その中で、アナログ規制7項目の規制見直し閲覧・縦覧における電子化が主になっています。

今後、手続きなどで気をつけるべきことも変わっていくので、是非ご確認ください。

目次

1.7つのアナログ規制とは?
2.廃棄物処理における変更点
(1)第一:排出事業者の処理状況の確認について
(2)第二:報告及び立入検査について
(3)第三:技術管理者及び廃棄物処理責任者の職務の実施について
(4)第四:許可の申請等について
(5)第五:書類の閲覧・縦覧等について
3.まとめ

1.7つのアナログ規制とは?

「デジタル原則に照らした規制の一括見直しプラン」(令和4年6月3日デジタル臨時行政調査会決定)において、7つのアナログ規制として以下のことを示しています。
(※これは、廃棄物に限らない内容です。)
 

目視規制 人が現地に赴き、施設や設備、状況等が法令等が求める一定の基準に適合しているかどうかを、目視によって判定すること(検査・点検)や、実態・動向などを目視によって明確化すること(調査)、人・機関の行為が遵守すべき義務に違反していないかどうかや設備・施設の状態等について、一定期間、常時注目すること(巡視・見張り)を求めている規制
実地監査規制 人が現場に赴き、施設や設備、状況等が法令等が求める一定の基準に適合しているかどうかを、書類・建物等を確認することによって判定することを求めている規制
定期検査・点検規制 施設や設備、状況等が法令等が求める一定の基準に適合しているかどうかを、一定の期間に一定の頻度で判定すること(第三者検査・自主検査)や、実態・動向・量等を、一定の期間に一定の頻度で明確化すること(調査・測定)を求めている規制
常駐・専任規制 (物理的に)常に事業所や現場に留まることや、職務の従事や事業所への所属等について、兼任せず、専らその任にあたること(1人1現場の紐付け等)を求めている規制
対面講習規制

国家資格等の講習をオンラインではなく対面で行うことを求めている規制
書面掲示規制

国家資格等、公的な証明書等を対面確認や紙発行で、特定の場所に掲示することを求めている規制
往訪閲覧縦覧規制 申請に応じて、又は申請によらず公的情報を閲覧・縦覧させるもののうち、公的機関等への訪問が必要とされている規制


各分野での先行事例として、このようなことも検討中とされています。

〇電子官報の実現
〇書面・対面の行政手続における書面による交付・通知の見直し
〇本人確認におけるマイナンバーカードの活用推進
〇引越しに伴う住所変更手続の簡素化・効率化
〇自動車保有に係る行政手続のデジタル化推進
〇FD等を用いる申請・届出等のオンライン化




2.廃棄物処理における変更点

デジタル化に向けて、令和5年3月31日に環境省通知で規制の見直しが示されました。

デジタル原則を踏まえた廃棄物の処理及び清掃に関する法律等の適用に係る解釈の明確化等について(通知)
環循適発第23033125号、環循規発第23033110号


これは、デジタル社会を見据えて、廃棄物処理法においてもアナログ規制を解消していくためのものです。
ただ、あくまで技術的な助言としての通知になるので、各自治体で進捗は差が出てくると思われます。

では、通知の内容に沿ってみていきます。


(1)第一:排出事業者の処理状況の確認について

廃棄物処理法第3条第1項及び第12条第7項により、排出事業者は処理委託先に処理の状況を確認する必要があります。

処理を委託した産業廃棄物の保管状況や実際の処理工程等について、
処理業者とコミュニケーションをとりながら確認を行うことや、
公開されている情報について不明な点や疑問点があった場合には処理業者に回答を求めることなど、
法に基づき適正な処理がなされているかを実質的に確認することが重要となっています。

そのために今までは実地確認をされていたと思いますが、
今後は、デジタル技術を活用して処理状況を確認することも可能となりました。

例として出されているのが次のとおりです。
・電磁的記録による許可内容や帳簿等の情報の確認

・オンライン会議システム等を用いた処理施設の稼働状況や周辺環境の確認

・情報通信機器を使用して産業廃棄物処理業者への管理体制の聴取を行う

実質的には電子化が進んでいたところだと思いますが、今回明確に示されました。


【参考条文】
廃棄物処理法
(事業者の責務)
第三条 事業者は、その事業活動に伴つて生じた廃棄物を自らの責任において適正に処理しなければならない。
(以下略)


(事業者の処理)
第十二条 事業者は、自らその産業廃棄物(特別管理産業廃棄物を除く。第五項から第七項までを除き、以下この条において同じ。)の運搬又は処分を行う場合には、政令で定める産業廃棄物の収集、運搬及び処分に関する基準(当該基準において海洋を投入処分の場所とすることができる産業廃棄物を定めた場合における当該産業廃棄物にあつては、その投入の場所及び方法が海洋汚染等及び海上災害の防止に関する法律に基づき定められた場合におけるその投入の場所及び方法に関する基準を除く。以下「産業廃棄物処理基準」という。)に従わなければならない。

(中略)

5 事業者(中間処理業者(発生から最終処分(埋立処分、海洋投入処分(海洋汚染等及び海上災害の防止に関する法律に基づき定められた海洋への投入の場所及び方法に関する基準に従つて行う処分をいう。)又は再生をいう。以下同じ。)が終了するまでの一連の処理の行程の中途において産業廃棄物を処分する者をいう。以下同じ。)を含む。次項及び第七項並びに次条第五項から第七項までにおいて同じ。)は、その産業廃棄物(特別管理産業廃棄物を除くものとし、中間処理産業廃棄物(発生から最終処分が終了するまでの一連の処理の行程の中途において産業廃棄物を処分した後の産業廃棄物をいう。以下同じ。)を含む。次項及び第七項において同じ。)の運搬又は処分を他人に委託する場合には、その運搬については第十四条第十二項に規定する産業廃棄物収集運搬業者その他環境省令で定める者に、その処分については同項に規定する産業廃棄物処分業者その他環境省令で定める者にそれぞれ委託しなければならない。

6 事業者は、前項の規定によりその産業廃棄物の運搬又は処分を委託する場合には、政令で定める基準に従わなければならない。

7 事業者は、前二項の規定によりその産業廃棄物の運搬又は処分を委託する場合には、当該産業廃棄物の処理の状況に関する確認を行い、当該産業廃棄物について発生から最終処分が終了するまでの一連の処理の行程における処理が適正に行われるために必要な措置を講ずるように努めなければならない。
(以下略)




(2)第二:報告及び立入検査について

廃棄物処理法第19条第1項に基づき、廃棄物処理施設への行政の立入検査が行われてきました。

立入検査は、
「廃棄物の適正な処理を確保するため、廃棄物の処理状況や処理施設の構造、維持管理の状況等を確認し、必要な情報を把握する」
ために必要なものです。

今回、デジタル技術を活用する具体例として、次のように示されています。

・オンライン会議システム等を活用して廃棄物の処理状況や帳簿書類の内容等を遠隔地から確認及び質疑応答を行うこと

・ドローン映像により施設の構造等を確認すること

あくまで一例ではありますが、立入検査の全てがデジタル化されるということは無いと思われます。
技術的な問題や通信設備の問題もあるかと思います。

ただ、アナログな方法とデジタル化を組み合わせて効率化は進むのではないでしょうか。

オンライン会議システムでのやり取りは早い段階で可能だと思います。
ドローンでの3D視点での確認などは、今後出てくるかもしれません。

ただ、各自治体の取組みの差が出てくる内容だと思うので、自治体に確認することが必要です。

【参考条文】
廃棄物処理法
(立入検査)
第十九条 都道府県知事又は市町村長は、この法律の施行に必要な限度において、その職員に、事業者、一般廃棄物若しくは産業廃棄物若しくはこれらであることの疑いのある物の収集、運搬若しくは処分を業とする者その他の関係者の事務所、事業場、車両、船舶その他の場所、一般廃棄物処理施設若しくは産業廃棄物処理施設のある土地若しくは建物若しくは第十五条の十七第一項の政令で定める土地に立ち入り、廃棄物若しくは廃棄物であることの疑いのある物の保管、収集、運搬若しくは処分、一般廃棄物処理施設若しくは産業廃棄物処理施設の構造若しくは維持管理若しくは同項の政令で定める土地の状況若しくは指定区域内における土地の形質の変更に関し、帳簿書類その他の物件を検査させ、又は試験の用に供するのに必要な限度において廃棄物若しくは廃棄物であることの疑いのある物を無償で収去させることができる。

2 環境大臣は、この法律の施行に必要な限度において、その職員に、再生利用認定業者、広域的処理認定業者若しくは無害化処理認定業者の事務所、事業場、車両、船舶その他の場所若しくは第九条の八第一項若しくは第十五条の四の二第一項、第九条の九第一項若しくは第十五条の四の三第一項若しくは第九条の十第一項若しくは第十五条の四の四第一項の認定に係る施設のある土地若しくは建物若しくは国外廃棄物若しくは国外廃棄物であることの疑いのある物を輸入しようとする者若しくは輸入した者若しくは廃棄物若しくは廃棄物であることの疑いのある物を輸出しようとする者若しくは輸出した者の事務所、事業場その他の場所に立ち入り、当該認定に係る収集、運搬若しくは処分若しくは当該認定に係る施設の構造若しくは維持管理若しくは国外廃棄物若しくは国外廃棄物であることの疑いのある物の輸入若しくは廃棄物若しくは廃棄物であることの疑いのある物の輸出に関し、帳簿書類その他の物件を検査させ、又は試験の用に供するのに必要な限度において廃棄物若しくは廃棄物であることの疑いのある物を無償で収去させることができる。

3 前二項の規定により立入検査をする職員は、その身分を示す証明書を携帯し、関係人に提示しなければならない。

4 第一項及び第二項の規定による立入検査の権限は、犯罪捜査のために認められたものと解釈してはならない。




(3)第三:技術管理者及び廃棄物処理責任者の職務の実施について

廃棄物処理法第21条第1項により廃棄物処理施設に技術管理者を置くこと、さらに、「産業廃棄物処理対策の強化について」(平成2年4月26日付け衛産31号厚生省生活衛生局水道環境部長通知)により施設に常駐することが定められていました。

今回、通知の一部を改正し、技術管理責任者は常駐ではなく、遠隔からの職務でも可能となっています。

ただ、複数施設の兼任も可能かなどは通知内で明確ではないので、自治体に確認する必要があります


【参考条文】
廃棄物処理法
(技術管理者)
第二十一条 一般廃棄物処理施設(政令で定めるし尿処理施設及び一般廃棄物の最終処分場を除く。)の設置者(市町村が第六条の二第一項の規定により一般廃棄物を処分するために設置する一般廃棄物処理施設にあつては、管理者)又は産業廃棄物処理施設(政令で定める産業廃棄物の最終処分場を除く。)の設置者は、当該一般廃棄物処理施設又は産業廃棄物処理施設の維持管理に関する技術上の業務を担当させるため、技術管理者を置かなければならない。ただし、自ら技術管理者として管理する一般廃棄物処理施設又は産業廃棄物処理施設については、この限りでない。

2 技術管理者は、その管理に係る一般廃棄物処理施設又は産業廃棄物処理施設に関して第八条の三第一項又は第十五条の二の三第一項に規定する技術上の基準に係る違反が行われないように、当該一般廃棄物処理施設又は産業廃棄物処理施設を維持管理する事務に従事する他の職員を監督しなければならない。

3 第一項の技術管理者は、環境省令で定める資格(市町村が第六条の二第一項の規定により一般廃棄物を処分するために設置する一般廃棄物処理施設に置かれる技術管理者にあつては、環境省令で定める基準を参酌して当該市町村の条例で定める資格)を有する者でなければならない。




(4)第四:許可の申請等について

令和2年よりコロナウイルス感染症対処のため、メール等を利用した書類の提出が認められてきました。
今回は、あくまで引き続きやっていく、という内容になっています。
申請自体のオンライン化はまだ先のようです。



(5)第五:書類の閲覧・縦覧等について

産業廃棄物処理施設のうち、以下の施設は設置許可申請書類の告示・縦覧が必要になっています。

・産業廃棄物の焼却施設(法施行令第7条第1項第3号、第5号、第8号、第12号および第13号の2)
・廃石綿等または石綿含有産業廃棄物の溶融施設(法施行令第7条第1項第11号の2)
・廃PCB等またはPCB処理物の分解施設およびPCB汚染物またはPCB処理物の洗浄施設または分解施設(法施行令第7条第1項第12号の2および第13号)
・産業廃棄物の最終処分場(法施行令第7条第1項第14号)

今までは県の保健所などに申請書類の写しが置かれていましたが、
今後、縦覧及び閲覧はデジタル化を基本とすることになります。

具体的な方法としては以下のように示されています。


縦覧については、今後、縦覧対象である申請書等について、事業者に対し電子データの提出を求める等してデータ保存し、縦覧はインターネットを利用する方法によることなどが考えられる。
また、閲覧については、今後作成する台帳をデータにより保存し、閲覧の請求及び閲覧はオンライン上で行うことなどが考えられる。

縦覧及び閲覧のデジタル化に当たっては、必要に応じ、書類の縦覧及び閲覧をインターネット等の電磁的方法で行うとともに対面又は書面においても行うことや、書類等を全てインターネット上に公表することが技術的に困難な場合には、当該書類等の概要を公表することと併せて、閲覧者の求めに応じ個別にオンライン上での情報提供を検討することは差し支えない。



申請にあたって、書類の電子データ化自体はPDF化するのであれば特に技術的に問題はないかと思います。

また、埋立終了後の最終処分場をまとめた指定区域台帳についても通知で触れられています。
これについては、土地の調査でwebから確認できるのはありがたいです。


【参考条文】
廃棄物処理法
(一般廃棄物処理施設の許可)
第八条 一般廃棄物処理施設(ごみ処理施設で政令で定めるもの(以下単に「ごみ処理施設」という。)、し尿処理施設(浄化槽法第二条第一号に規定する浄化槽を除く。以下同じ。)及び一般廃棄物の最終処分場で政令で定めるものをいう。以下同じ。)を設置しようとする者(第六条の二第一項の規定により一般廃棄物を処分するために一般廃棄物処理施設を設置しようとする市町村を除く。)は、当該一般廃棄物処理施設を設置しようとする地を管轄する都道府県知事の許可を受けなければならない。

(中略)

4 都道府県知事は、一般廃棄物処理施設(政令で定めるものに限る。)について第一項の許可の申請があつた場合には、遅滞なく、第二項第一号から第四号までに掲げる事項、申請年月日及び縦覧場所を告示するとともに、同項の申請書及び前項の書類(同項ただし書に規定する場合にあつては、第二項の申請書)を当該告示の日から一月間公衆の縦覧に供しなければならない。
(以下略)


(産業廃棄物処理施設)
第十五条 産業廃棄物処理施設(廃プラスチック類処理施設、産業廃棄物の最終処分場その他の産業廃棄物の処理施設で政令で定めるものをいう。以下同じ。)を設置しようとする者は、当該産業廃棄物処理施設を設置しようとする地を管轄する都道府県知事の許可を受けなければならない。

(中略)

4 都道府県知事は、産業廃棄物処理施設(政令で定めるものに限る。)について第一項の許可の申請があつた場合には、遅滞なく、第二項第一号から第四号までに掲げる事項、申請年月日及び縦覧場所を告示するとともに、同項の申請書及び前項の書類(同項ただし書に規定する場合にあつては、第二項の申請書)を当該告示の日から一月間公衆の縦覧に供しなければならない。
(以下略)



3.まとめ

通達で以前の取り扱いの変更が示されましたが、今後、自治体での指導要綱の改正や実質的な取扱いの変更が出てくると思いますので、
各自治体からの情報発信を追っていく必要があります。

また、情報の電子化による提出やそのための各社での保存も進んでいくと思います。
完全な電子化はまだ先かもしれませんが、対応するための準備を事業者のプラスにする形で進めていく必要があります。

廃棄物処理については様々な法令が関係してくるため、専門家のサポートが必要なケースが多くなります。
株式会社環境と開発は、長年のコンサルティング経験を活かしたサポートをしていますので、お困りの際はお気軽にご相談ください。


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