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林地開発許可と盛土規制法の申請を効率化するための実務ポイント

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林地開発を計画する際、森林法に基づく「林地開発許可」だけでなく、令和5年から各自治体で施行された「盛土規制法」への対応も求められるようになりました。

特に、両方の許可が必要なケースでは、申請のタイミングや設計基準の調整を誤ると、工事の遅延や追加コストにつながるリスクがあります。

本記事では、林地開発許可と盛土規制法の並行対応を効率化するための実務ポイントを、設計段階から工事完了までの流れに沿ってわかりやすく解説します。

自治体ごとのローカル要件や報告義務への対応も含め、現場で役立つ情報をまとめましたので、ぜひ参考にしてください。

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1.林地開発許可手続きと関係他法令の手続き

林地開発許可手続きを進めるにあたって、土地の状況や開発行為の目的によって、手続きが必要な関係法令があります。

改めて、林地開発の対象は以下のとおりです。



➀対象となる森林の区域

地域森林計画対象林(5条森林)


➁対象となる開発行為

ゴルフ場、レジャー施設、工場、宅地、農用地、道路等の設置及び造成、並びに土石等の採掘、その他の森林の形質を変更する行為


③対象となる開発行為の規模

1 開発行為に係る森林の土地の面積が、全体計画で1ヘクタール(太陽光発電設備の設置を目的とする場合には、0.5ヘクタール)を超える場合

2 道路を開設する場合には、有効幅員が3メートルを超えるもので、開発行為に係る森林の土地の面積が全体計画で1ヘクタールを超える場合

➀だと、計画地に森林以外があれば、畑があれば農地法など関連法令がでてきます。
➁だと、土地自体で土壌汚染対策法、建物を建てるなら建築基準法などがでてきます。
③だと、一定規模の特定の施設で、環境影響評価法などがでてきます。

例)関係他法令手続き状況一覧表

【出展:熊本県HP 熊本県林地開発許可制度実施要項


このように、林地開発には関係法令が多くかかわるのですが、令和5年より盛土規制法が加わっています。
(各都道府県で時期に差はあります。)

また、盛土規制法に該当する場合、許可後の現地工事での対応でも森林法と盛土規制法を並行して手続きする必要があります。




2.盛土規制法の規制対象(概要)

盛土規制法は、盛土による災害を防ぐために制定された法律です。

従来の宅地造成等規制法を改正し、盛土の安全性確保を義務化しました。

対象は宅地造成だけでなく、林地開発にも適用されるため、許可申請や設計基準が厳格化されています。

背景には、盛土の不適切施工や管理不全による土砂災害事例があり、設計段階から工事完了後までの一貫した安全管理が求められるようになりました。

【盛土規制法の規制対象】
kiseitaisyo.jpg
【出展:国土交通省HP】 ※各都道府県等の条例により規制対象規模が異なる場合があります。具体的には各都道府県等にご確認ください。


※「盛土規制法」について詳しくは、『盛土規制法 今までとの違いと運用開始時期について』で詳しく説明しています。
『盛土規制法 今までとの違いと運用開始時期について』
https://www.etod.co.jp/article/blog/176



3.盛土規制法の許可不要工事に林地開発は含まれない?

盛土規制法には条文で許可不要工事が定められています。

〇盛土規制法の許可不要工事【盛土規制法第12条第1講ただし書き関係】
  各法令で許可等を受けており、災害の発生のおそれがないと認められる工事は許可の対象から除外


ただ、森林法の林地開発許可については、盛土規制法で定められている盛土規制法の許可不要工事に含まれていません

(森林・林業関係)
  林道施設   ・・・ 林道は、公共施設である道路に含まれるため、本法の規制対象外 【法律第2条】
  治山施設   ・・・ 治山施設は、公共施設である林地荒廃防止施設として、本法の規制対象外 【省令第1条】
  森林作業道等 ・・・ 森林作業道等は、森林の施業を実施するために必要な作業路網の整備に関する
             工事として、本法の許可不要工事に該当 【省令第8条】



また、都市計画法第29条の開発許可はみなし許可扱いなのですが、林地開発許可はそのような扱いでもありません。

◇開発許可のみなし許可扱い
  都市計画法第29条1項2項許可を受けたときは、盛土規制法の許可を受けたものとみなす(みなし許可)


以上のことから、盛土規制法の手続きを林地開発の手続きと並行して行う必要があります。



4.盛土規制法の手続きの流れ

盛土規制法の手続きの流れは以下のとおりです。


<盛土規制法の手続き>
盛土規制法の手続きの流れ

盛土規制法に該当するような盛土等がある計画であれば、盛土規制法の許可・届出手続きが必要になります。





5.林地開発許可と盛土規制法の手続きタイミング

自治体によって違うところもありえますが、基本的な流れを並べています。

林地開発許可と盛土規制法許可の流れ


ここで、いくつかポイントがあります。


➀住民説明は同時開催も可能

林地開発許可の「住民説明」盛土規制法の「周辺住民への事前周知」は、それぞれ説明対象が違うこともあり、個別に行うことも可能です。

ただ、説明を別にすることで、『先日説明会があったらしいが私は聞いてない』など、本来の意図とは違うところで、ご理解を頂きにくくなることもあります。

最終的な設計内容に住民説明での意見を反映することが必要となることもあるので、できるだけまとめていくことをお勧めします。

※自治体や地元の意見によって別に行うことを求められることもあります。


➁盛土規制法の許可申請は林地開発より前か同時

こちらも自治体によっての差はありますが、開発行為にかかるメインの申請は林地開発許可となるので、盛土規制法の申請タイミングが遅くなりすぎないように気を付ける必要があります。

また、一般的に、盛土規制法の許可申請は1ヵ月半ほどとされているので、林地開発許可申請より前に許可となる自治体もありますし、同時許可とする自治体もあります。


③標識掲出はそれぞれ

標識掲出は他法令と同様にそれぞれ掲出が必要です。


④中間確認・中間検査はそれぞれで対象・タイミングが違う

林地開発許可と盛土規制法で規制対象とその工事タイミングが違うので、タイミングがズレます。

<林地開発の中間確認>
林地開発の中間確認は、主に令和4年の改正から行われており、多くは防災施設の工事完了タイミングで中間確認を行います。

対象:主に防災施設
時期:全体としては工事初期


<盛土規制法の中間検査>
盛土規制法の中間検査は「宅地造成及び特定盛土等規制法施行令(政令)」に定められています。

盛土規制法 中間検査



それぞれ、確認・検査中は該当の工事を進められないため、全体の工事工程で余計な時間がかからないよう調整が必要です。


⑤盛土規制法の定期報告は3か月ごと

盛土規制法の定期報告は、許可又は前回の報告の日の翌日から数えて3か月ごとと決まっています。
(盛土規制法第19条)

盛土規制法の定期報告の対象規模等は次のとおりです。

盛土規制法 定期報告



また、工事の完了までが比較的短期間のものはいいのですが、土砂処分場といった長期にわたって行われるものについても、定期報告が完了まで続きます。


宅地造成及び特定盛土等規制法
(定期の報告)
第十九条 第十二条第一項の許可(政令で定める規模の宅地造成等に関する工事に係るものに限る。)を受けた者は、主務省令で定めるところにより、主務省令で定める期間ごとに、当該許可に係る宅地造成等に関する工事の実施の状況その他主務省令で定める事項を都道府県知事に報告しなければならない。

2 都道府県は、前項の報告について、宅地造成等に伴う災害を防止するために必要があると認める場合においては、同項の政令で定める宅地造成等の規模を当該規模未満で条例で定める規模とし、同項の主務省令で定める期間を当該期間より短い期間で条例で定める期間とし、又は同項の主務省令で定める事項に条例で必要な事項を付加することができる。





6.申請者が押さえるべき実務上の注意点

林地開発許可申請にあたって、盛土規制法を並行して進めていく際の注意点のまとめです。

(1)設計段階で盛土規制法の技術基準を満たすことが必須

林地開発での設計において、盛土規制法にかかるような盛土や擁壁に関しては、今までと異なり盛土規制法の技術基準を満たす必要があります。

計画変更により、規模が盛土規制法にかかるようなものになるようなこともありえるので、事前に盛土規制法の基準に則したものにしていくことが大事になります。


(2)ダブル許可(林地開発許可+盛土規制法許可)のスケジューリングを事前調整

林地開発許可と盛土規制法許可の申請においては、担当部署が異なっていることが多いです。

また、必要な土地の検査や、住民説明での要望など、できるだけ手戻りにならないように同時に進めていくことが大事です。

その意味でも、初期の事前相談の段階から、双方の部署と連携を取り、場合によっては情報を全部署で共有しながら進めていくことが肝心です。


(3)自治体ごとのローカル要件を確認

もともとの林地開発許可において、法や規則に定められていない部分もあり、場合によっては内規で判断が進むこともあります。

他の自治体ではこうだったのに、ということもよくある話なので、事前の手引きや要綱の確認、並行しての条例などの確認、あとは実際に自治体に足を運んでの確認を早い段階で行っていくことが大事です。



(4)工事中の報告フォーマットを着工前に合意しておく(写真の撮影角度、測定頻度)

許可後の中間検査や完了検査、特に盛土規制法の報告フォーマットは新たに出てくるものなので、注意する必要があります。

行政側との報告内容や写真内容などの確認も大事になりますし、施工される工事業者との確認も大事です。

手引きに載っているようなところでも、それをもとに見本を作成し、伝達に漏れが無いように気をつけてください。






7.小規模林地開発や伐採届と盛土規制法

林地開発の規模が1ヘクタール以下(太陽光発電設備の設置であれば0.5ヘクタール以下)の場合、基本的には伐採届の提出が必要ですが、自治体によって伐採届と林地開発許可の間に「小規模林地開発届出制度」を定めています。


小規模林地開発でも伐採届でも、基本的には林地開発許可と同様に、盛土規制法に該当するのであれば並行して申請する必要があります。

ただ、こちらについては、市町村で林務と盛土の窓口が一緒になっていたりすることもあるので、同時審査など進めやすい可能性もあります。



※「小規模林地開発」について詳しくは、『林地開発許可の手続きの流れ 森林法以外の条例にも注意!』で詳しく説明しています。
林地開発許可の手続きの流れ 森林法以外の条例にも注意!
https://www.etod.co.jp/article/blog/130




8.よくある質問(Q&A)


Q1. 林地開発許可と盛土規制法、両方の申請が必要になるのはどんな場合ですか?

A1. 林地開発許可が必要な規模(森林法で定める1ヘクタール以上、太陽光発電設備の場合は0.5ヘクタール以上)で、かつ盛土規制法の対象となる盛土を伴う計画の場合、両方の申請が必要です。宅地造成だけでなく林地開発にも盛土規制法が適用されるため、並行対応が求められます。



Q2. 盛土規制法の許可不要工事に林地開発は含まれますか?

A2. 含まれません。盛土規制法では、他法令で許可を受けていて災害の恐れがない工事は除外されますが、林地開発許可は盛土規制法の「みなし許可」には該当しません。そのため、林地開発許可を取得していても盛土規制法の手続きは別途必要です。



Q3. 並行申請の際、どちらの許可を先に取るべきですか?

A3. 自治体によって異なる場合がありますが、基本的には盛土規制法の許可申請を林地開発許可より前、または同時に行うことが推奨されています。設計段階で盛土規制法の技術基準を満たしておくことが重要です。



Q4. 並行対応で注意すべきスケジュール管理のポイントは?

A4. ダブル許可のスケジュール調整が最大のポイントです。住民説明会は同時開催が可能ですが、標識掲出や中間検査はそれぞれ別に行う必要があります。また、盛土規制法では工事中の定期報告(3か月ごと)が義務付けられているため、報告フォーマットを事前に自治体と合意しておくとスムーズです。



Q5. 小規模林地開発や伐採届の場合も盛土規制法の対応は必要ですか?

A5. はい、必要です。林地開発の規模が1ヘクタール以下(太陽光発電設備なら0.5ヘクタール以下)でも、盛土規制法に該当する盛土を伴う場合は並行して申請する必要があります。自治体によっては「小規模林地開発届出制度」がありますが、盛土規制法の手続きは別途必要です。



 

9.まとめ|林地開発許可と盛土規制法の並行対応のポイント

(1)まず確認すべき4つのポイント

盛土規制法施行により、林地開発は申請に向けての調整に加え、工事施工後の調整も鍵になりました。

成功のポイントは、

➀事前相談の早期実施(ローカル運用の把握)
➁根拠の明確な設計(安定計算・排水容量・維持管理計画)
➂監視・記録の仕組み化(テンプレートの事前承認)
④工期と降雨リスクのマネジメント(梅雨・台風期の工程配慮)

の4点です。

許可スケジュールと安全設計の整合を取ることで、審査の通過率と工事の安全性を高められます。


(2)専門家や自治体との連携の重要性

盛土規制法や林地開発手続きは、計画・設計において多岐にわたる専門分野の知見を必要とします。

また、自治体ごとに組織的な違いや条令も含んだ手続きもあり、自治体ごとの差もでてきます。

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この記事の著者です!
はじめまして。
この記事を監修している【株式会社 環境と開発】の代表取締役 田邉です。
太陽光発電所や廃棄物処理施設の設置に関するコンサルティングを数多く⼿掛けながら関連情報を発信しています。
太陽光発電所や廃棄物処理施設の計画・お悩み、ご質問・ご不明な点等ありましたら、ご遠慮なくお問い合わせください。
経歴
2001年株式会社環境と開発に入社。2007年には代表取締役就任する。業界トップレベルの許認可・法令関係のノウハウを持ち、安全性、経済性を満たした計画の提案から、事業開始まで一貫した提供を行う。
株式会社環境と開発 代表取締役社長 田邉陽介
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