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産業廃棄物関連の必須の講習、受けるべき講習(排出事業者・処理事業者)

産業廃棄物の適正な管理と処理は、排出事業者・処理事業者の双方にとって法令遵守の要であり、信頼される事業運営の基盤でもあります。
特に、許可取得・更新に必要な講習や、従業員教育に活用すべき研修制度については、制度の複雑さや更新頻度の高さから、正確な理解と計画的な対応が求められます。
お客様からも「どんな講習を受ければいいのか?」「許可取得に必要な講習は?」「従業員にも受けさせるべき?」といった質問をいただきます。
そこで今回は、排出事業者・処理事業者それぞれの立場に応じた講習の種類、受講対象、実務上の留意点、そして申請・運用における注意点までを体系的に整理しました。
講習の選び方に迷っている方、これから許可申請を控えている方、社内教育を強化したい方は、ぜひ参考にしてください。
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1.排出事業者向け 受けるべき講習は
まずは産業廃棄物の排出事業者向けの講習です。
排出事業者には、基本的には法定講習の義務はありませんが(注1)、次のようなケースでは受講が推奨されます。
・廃棄物管理責任者や環境管理担当者が、法令やマニフェスト制度を正しく理解するため
・ISO14001や環境監査対応の一環として
・社内教育や委託先との契約管理の質を高める目的
そんな排出事業者の方には以下の講習がお勧めです。
※詳しい内容については、リンク先の各団体のHPよりご確認ください。
〇産業廃棄物等実務管理者講習
【主催:(一財)日本環境衛生センター】
https://www.jesc.or.jp/training/tabid/127/Default.aspx
オンライン講習(Zoom) 3時間×2日間 年3回開催(2025年度)
(注1:事業活動に伴い特別管理産業廃棄物を生ずる事業場を設置している事業者は、廃棄物処理法第12条の2第8項に基づき、当該事業場ごとに特別管理産業廃棄物管理責任者を設置しなくてはなりません。特別管理産業廃棄物管理責任者になろうとする方は、(公財)日本産業廃棄物処理振興センター(JWセンター)が実施する講習会を修了する必要があります。)
また、電子マニフェストの操作が体験できるセミナーもあります。
これは東京開催のみになりますが、各県の産業資源循環協会に問合せてもいいかと思います。
〇電子マニフェスト操作体験セミナー
【主催:(公財)日本産業廃棄物処理振興センター(JWセンター)】
https://www.jwnet.or.jp/jwnet/manual/seminar/index.html
東京開催(JWセンター:台東区上野) 120分 年14回開催
※参加費 無料 5月~9月開催のため、残りは9月のみ(2025年度)
2.排出事業者向け 講習受講での注意点、Q&A
よくある注意点
- 定員制なので早めの予約が必須
- 支払い期限を過ぎると仮受付が無効
排出事業者向け
- Q. 排出事業者は産業廃棄物関連の講習を受ける義務がありますか?
A. 法令上の義務はありませんが、制度理解や社内教育の観点から受講が推奨されます。
Q. どんな講習を受けると効果的ですか?
A. マニフェスト制度、委託契約、廃棄物分類・保管などを扱う研修やセミナーが有効です。
3.処理事業者向け① 許可取得に必須の講習
(1)産業廃棄物処理業に必須の講習
「産業廃棄物処理業講習会」
まず、廃棄物の処理事業者(収集運搬業、処分業)向けの講習です。
これは、産業廃棄物処理業の申請に必要な講習となっています。
産業廃棄物収集運搬業や産業廃棄物処分業の許可申請で求められる
「事業を行うに足りる技術的能力を説明する書類」に「講習会修了証」があるからです。
〇処理業(新規)講習会 【収集・運搬課程、処分課程、同時受講】
https://www.jwnet.or.jp/workshop/list/shori_sinki/
〇処理業(更新)講習会 【収集・運搬課程、処分課程、同時受講】
https://www.jwnet.or.jp/workshop/list/shori_kousin/
【主催:(公財)日本産業廃棄物処理振興センター(JWセンター)】
オンラインと対面形式が選択可能
※講習後に修了試験があり、それに合格しないと講習会修了証をもらえません。
当然ですが、試験はオンラインではありません。
ここで注意してほしいのが、産業廃棄物処理業の申請のために講習会修了証が必要になるのは、
法人の場合、「法人の代表者」若しくは「その業務を行う法人の役員」又は「業を行おうとする区域にある事業場の代表者」のみということです。
【重要】都道府県・政令市によっては、その取扱いが異なる場合がありますのであらかじめ確認してください。
社員の誰かが修了証を持っていても、産業廃棄物処理業の申請には使えませんが、
「将来的な管理者として」「業務のさらなる理解のため」受講することには意味があるといえます。
また、講習会修了証にはいくつか注意点があります。
種 類 | 有効期間 |
新規 | 5年 |
更新 | 2年 |
(新規)講習会修了証の有効期間は5年、(更新)講習会修了証の有効期間は2年となっています。
これは、いわゆる免許と違い、処理業を営んでいる間に必ず有効である必要はありません。
(処理業の更新は5年おき、優良事業者であれば7年おきなので、更新申請の際に有効な修了証があればいいです。)
また、講習会の修了試験は、難易度は高くはないものの不合格となる可能性もあるので、
新規で処理業を始めたいのであれば、事業計画を止めてしまうことが無いように、早めに受講することをお勧めします。
(知識を深めることで計画をより良いものにできるメリットもあります。)
(2)廃棄物処理施設設置許可に必須の講習
「廃棄物処理施設技術管理者講習」
次に、廃棄物の処分業向けの講習です。
これは、廃棄物処理施設設置許可の申請に必要な技術管理者の講習となっています。
廃棄物処理施設の設置にあたって、
廃棄物処理法施行規則第17条に規定する”学歴・経験等”の要件を備え、
かつ、
厚生省生活衛生局水道環境部環境整備課長通 知「衛環96号」(平成12年12月28日)において、
『技術管理者等の資質の向上を図ることは、廃棄物の適正処理を推進するために重要であり、かかる観点から、
廃棄物処理施設及び事業場の類型ごとに必要な専門的知識及び技能に関する講習等を修了することが望ましいものであること。』と示されています。
〇廃棄物処理施設技術管理者講習
https://www.jesc.or.jp/training/tabid/563/Default.aspx
【主催:(一財)日本環境衛生センター】
対面形式
※3コースのみeラーニングでの受講が選択可能
(ごみ処理施設コース:一廃、破砕・リサイクル施設コース:一廃・産廃、産業廃棄物中間処理施設コース:産廃)
開催地と日程が限られるので、受講の際には早めにスケジュールに入れてください。
あと、主催が出している募集要項にも記載があるのですが、
「施設設置許可等申請における当講習会受講の必要性、受講コースの選択については、担当自治体にご相談の上、決定してください。」
とあるように、必要な講習かどうかは確認をして受講してください。
※産業廃棄物中間処理施設コースには、「焼却コース」、「破砕・リサイクルコース」、「バイオマス利活用関連コース」は含まれないので、実は持っていなかったということが無いように注意しましょう。
また、先ほどの処理業の講習会と違い、技術管理者の認定証には有効期限がありません。
こちらについても、技術管理者が足りないことがないように前もって養成する方ががいいでしょう。
(技術管理者の資格)
第十七条 法第二十一条第三項の規定による環境省令で定める資格は、次のとおりとする。
一 技術士法(昭和五十八年法律第二十五号)第二条第一項に規定する技術士(化学部門、上下水道部門又は衛生工学部門に係る第二次試験に合格した者に限る。)
二 技術士法第二条第一項に規定する技術士(前号に該当する者を除く。)であつて、一年以上廃棄物の処理に関する技術上の実務に従事した経験を有するもの
三 第八条の十七第二号イからチまでに掲げる者
※参考 チ 十年以上廃棄物の処理に関する技術上の実務に従事した経験を有する者
四 前三号に掲げる者と同等以上の知識及び技能を有すると認められる者
(3)特管関係の講習
特別管理産業廃棄物を取り扱う場合は、下記の講習会を受けて管理責任者等を置く必要があります。
【各主催:(公財)日本産業廃棄物処理振興センター(JWセンター)】
・特別管理産業廃棄物管理責任者に関する講習会
https://www.jwnet.or.jp/workshop/list/haishutu_tokuseki/index.html
・医療関係機関等を対象にした特別管理産業廃棄物管理責任者に関する講習会
https://www.jwnet.or.jp/workshop/list/haishutu_iryou/index.html
・PCB廃棄物の収集運搬作業従事者講習会
https://www.jwnet.or.jp/workshop/list/pcb/index.html
4.処理事業者向け② 業務で受けておくべき講習は
必須とはなっていないものの、業務上受けておくべき講習もあります。「廃棄物処理法を正しく理解し、産業廃棄物処理の基礎を学ぶ」ことを目的とし、
法的な部分から実務で必要な知識を学ぶことができます。
〇産業廃棄物処理実務者研修会
【主催:(公社)全国産業資源循環連合会】
https://www.zensanpairen.or.jp/disposal/training/jitumu2020/
eラーニング(オンライン)方式
事前に申し込んで、定められた1か月の間に受講する
<カリキュラム>
①産業廃棄物処理の基礎(全8章)
②産業廃棄物の委託処理と委託契約
③産業廃棄物管理票(マニフェスト)
④帳簿
開講期間(2025年)
第1期:5月、第2期:6月、第3期:7月、第4期:8月
第5期:11月、第6期:12月、第7期:1月
5.処理事業者向け③ 従業員・事務員に受けさせるべき講習は
電子マニフェストに関して、排出事業者向けのところでもあげましたが、
処理事業者にもおすすめなセミナーがあります。
これは東京開催のみになりますが、各県の産業資源循環協会に問合せてもいいかと思います。
〇電子マニフェスト操作体験セミナー
〇処分業者向けセミナー(省令改正対応:再資源化等の情報入力方法)
【主催:(公財)日本産業廃棄物処理振興センター(JWセンター)】
https://www.jwnet.or.jp/jwnet/manual/seminar/index.html
東京開催(JWセンター:台東区上野) 120分 年14回開催
※参加費 無料 5月~9月開催のため、残りは9月のみ(2025年度)
6.処理事業者向け 講習受講での注意点、Q&A
よくある注意点
- 定員制なので早めの予約が必須
- 顔写真のサイズ・背景に不備があると申込不可
- 支払い期限を過ぎると仮受付が無効
- 適格者(役員・政令使用人)以外が受講しても許可に使えない
処理事業者向け①(許可取得・更新)
- Q. 処理業の許可を取得するには講習が必要ですか?
A. はい。新規許可には「新規講習」、更新には「更新講習」の修了証が必要です。
Q. (処理業)講習の対象者は誰ですか?
A. 許可申請者のうち、役員または政令使用人が対象です。
Q. (処理業)講習修了証の有効期限は?
A. 新規講習は5年、更新講習は2年の有効期限があります。
Q. (技術管理者講習)認定証の有効期限は?
A. 有効期限はありません。
処理事業者向け②(業務に必要な講習)
- Q. 特別管理産業廃棄物を扱う場合、講習は必要ですか?
A. はい。専用の講習修了証が必要です。
Q. 石綿(アスベスト)関連の廃棄物を扱う場合は?
A. 石綿対応講習の受講が推奨されます。自治体によっては義務化されています。
処理事業者向け③(従業員・事務員)
- Q. 従業員や事務員にも講習を受けさせるべきですか?
A. 許可申請には使えませんが、業務理解や安全管理のために受講が有効です。
Q. どんな内容を教育すべきですか?
A. マニフェスト制度、廃棄物の分類・保管・運搬、安全衛生管理などが重要です。
講習受講の注意点
- Q. 講習申込で注意すべき点は?
- A. 定員制のため早めの申込が必要です。顔写真の不備や支払い遅延にも注意してください。
Q. 試験に落ちることはありますか?
A. はい。合格基準に達しないと不合格になります。
Q. (処理業)修了証の有効期限が切れていたら?
A. (処理業)許可申請に使えません。更新講習を受け直す必要があります。
Q. 受講者が退職した場合は?
A. 修了証が使えなくなるため、別の適格者に受講させる必要があります。
7.まとめ
今回の記事では、産業廃棄物関連の必須の講習、受けるべき講習について取り上げました。
個人として、知識を深めるために講習を受けることも大事ですが、
会社として人事運用の視点からも、講習については先を見据えて動くことが重要です。
株式会社環境と開発は、長年のコンサルティング経験を活かしたサポートをいたしますので、
お困りの際はお問い合わせください。
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【産業廃棄物設置許可・処理業の関連コンテンツ】
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〇産業廃棄物処理施設の設置許可について 〇都市計画区域・区域外とは?
〇廃棄物処理施設 土地の探し方 〇廃棄物処理法 処理施設の規制の変遷
〇みなし許可について 〇建築基準法第51条ただし書き許可
〇産業廃棄物処理業の許可の種類について 〇産業廃棄物処分業について
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