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廃棄物処理法の盛土規制法による影響(土砂≠廃棄物)

廃棄物処理法と盛土規制法、一見関係することが無いようにも見えますが、
土砂ではなく廃棄物となる「廃棄物混じり土」の扱いや災害廃棄物の扱いについて、
盛土規制法の成立で以前の廃棄物と土砂の問題が整理されたりしています。
今回は、「廃棄物処理法の盛土規制法による影響」について、今までとの違いや注意点などをお知らせします。
ぜひご覧ください。
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1.土砂 ≠ 廃棄物
あくまで「盛土規制法」は「土砂」の堆積や盛土・切土を規制するものであって、
廃棄物を規制するものではありません。
ここで、改めて「廃棄物」について定義を確認します。
に次のようにあります。
2 廃棄物の定義
(1)廃棄物とは、ごみ、粗大ごみ、汚でい、廃油、ふん尿その他の汚物又はその排出実態等からみて客観的に不要物として把握することができるものであって、気体状のもの及び放射性廃棄物を除く。固形状から液状に至るすべてのものをいうものであること。
なお、次のものは廃棄物処理法の対象となる廃棄物でないこと。
ア 港湾、河川等のしゅんせつに伴って生ずる土砂その他これに類するもの
イ 漁業活動に伴って漁網にかかった水産動植物等であって、当該漁業活動を行なった現場附近において排出したもの
ウ 土砂及びもっぱら土地造成の目的となる土砂に準ずるもの
基本的には自然にある土や砂は土地造成のため運んでも廃棄物にはならないといえます。
ただし、いくつかの注意点があります。
1)建設工事で発生する土砂(建設発生土)
建設発生土とは、建設工事に伴って発生する不要な土砂のことを指します。主に工事で小高い土地を削って平らにする場合や建物の基礎工事などで発生するものです。
例:建設発生土の主な発生源
建物の基礎工事(掘削)
道路やトンネルの建設
河川や港湾の浚渫(しゅんせつ)
土地区画整理や造成工事
多くの工事では、計画・設計段階から切土、盛土のバランスをとる等、可能な限り建設発生土は現場内利用が行われています。
建設発生土自体は廃棄物には該当しないので、利用が可能となっています。
2)廃棄物となる「土砂」
建設発生土は基本的には廃棄物には該当しないのですが、工事の場所によって土質が大きく変わってきます。そのため、リサイクル可能な建設発生土もありますが、リサイクルが難しい建設発生土が発生した場合は、土捨て場への搬入(一時処分・恒久処分)や埋立処分をする必要があります。
①有効利用可能な土:粒度や性状が良好で、他の工事で再利用可能。
⇒盛土材、埋戻し材、造成地の整地などで再利用
②利用困難な土:粘性が高い、含水比が大きい、汚染の可能性があるなど。
⇒処分場や埋立地、汚染土壌処理施設への搬入が必要(再利用不可)
※含水率が高く、掘削物を標準ダンプトラックに山積みできず、またはその上を人が歩けないような状態のものは「建設汚泥」として産業廃棄物として扱われます。
※条例で建設発生土の受入れ基準を定めている自治体もあり、土壌汚染に関する内容だと土壌環境基準、土壌汚染対策法の溶出量・含有量基準等が基準とされています。
3)廃棄物混じり土
また、土砂に廃棄物が混じっている場合は廃棄物扱いとなります。(廃棄物混じり土)廃棄物混じり土は、そのままだと当然現場で再利用できないため、
①現場でふるい機などを使い、土砂と廃棄物に分別された後の土砂を使用する。
②廃棄物として廃棄物の処理業者に運搬・処理を委託する。
どちらかで対応することになります。
※廃棄物混じり土を埋め戻すことは不法投棄となり、廃棄物処理法の中でも最大の罰則(法人3億円以下の罰金、個人5年以下の懲役もしくは1000万円以下の罰金又はこの併科)が定められている重罪です。
4)土砂を管理する法律のまとめ
ここまで見てきた通り、土砂の性状でその取扱い・管轄法令が変わってきます。建設発生土 ・・・ 盛土規制法
建設汚泥、廃棄物混じり土 ・・・ 廃棄物処理法
(汚染土壌 ・・・ 土壌汚染対策法)
2.盛土規制法とは
盛土規制法とは、熱海市の土石流災害を契機に制定され、令和5年(2023年)5月26日に施行されました。
宅地・農地・森林など土地の用途に関係なく、危険な盛土を全国一律の基準で規制し、 国土交通省と農林水産省の共管で進められています。
※「盛土規制法」について詳しくは、「盛土規制法」解説ページで詳しく説明しています。
『盛土規制法 今までとの違いと運用開始時期について』
https://www.etod.co.jp/article/blog/176
【盛土規制法の規制対象】
【出展:国土交通省HP】 ※各都道府県等の条例により規制対象規模が異なる場合があります。具体的には各都道府県等にご確認ください。
3.廃棄物処理法と盛土規制法の線引き
盛土規制法はスキマの無い規制として定められているため、廃棄物処理法とも重なる部分があるため、線引きがなされています。
〇盛土規制法の許可不要工事【盛土規制法第12条第1講ただし書き関係】
各法令で許可等を受けており、災害の発生のおそれがないと認められる工事は許可の対象から除外
※あくまで「許可不要」であり、規制対象には該当します。
政令 |
鉱山保安法:鉱物の採取(鉱業上使用する特定施設の設置の工事等) |
鉱業法:鉱物の採取(認可を受けた施業案の実施に係る工事) | |
採石法:岩石の採取(認可を受けた採取計画に係る工事) | |
砂利採取法:砂利の採取(認可を受けた採取計画に係る工事) | |
省令 |
土地改良法:土地改良事業(農業用用排水施設の新設等)等 |
火器類取締法:火薬類の製造施設の周囲に設置する土堤の設置等 | |
家畜伝染病予防法:家畜の死体等の埋却 | |
廃棄物の処理及び清掃に関する法律(廃棄物処理法):廃棄物の処分等 | |
土壌汚染対策法:汚染土壌の搬出又は処理等 | |
平成二十三年三月十一日に発生した東北地方太平洋沖地震に伴う原子力発電所の事故により放出された放射性物質による環境の汚染への対処に関する特別措置法:廃棄物又は除去土壌の保管又は処分 | |
森林の施業を実施するために必要な作業路網の整備に関する工事 | |
国、地方公共団体、一定の国みなし法人が非常災害のために必要な応急措置として行う工事 | |
高さ2m以下かつ面積500㎡超の盛土又は切土であって、盛土又は切土をする厚さが30㎝(都道府県が別に定める場合はその値)を超えないものを行う工事 | |
土石の堆積を行う土地の面積が300㎡を超えないもの | |
工事の施行に付随して行われるものであって、当該工事に使用する土石又は当該工事で発生した土石を当該工事の現場又はその付近に堆積するもの |
宅地造成及び特定盛土等規制法施行令(政令)、宅地造成及び特定盛土等規制法施行規則(省令)で上記のものが許可不要工事として記されています。
これらの工事に伴う盛土等は盛土規制法の許可手続きは不要です。
4.盛土規制法と廃棄物処理法の運用にかかる通知
前項で盛土規制法や政令・省令で各法令との線引きは示されていますが、
その後の令和5年9月29日に国交省・環境省・農水省が連名で通知を発しています。
盛土規制法が各省庁・各部局にまたがる内容であるため、関係部局間の連携が必須となるためです。
『宅地造成及び特定盛土等規制法及び廃棄物の処理及び清掃に関する法律の運用に係る関係部局間の連携に際しての留意事項について(通知)』
(令和5年9月29日 国官参宅第31号、5農振第1741号、5林整治第826号、環循適発第2309291号、環循規発第2309291号)
→通知本文へのリンク
通知の主なポイントを以下にまとめました。
①盛土規制担当部局と廃棄物規制担当部局との連携
不法・危険な廃棄物混じり盛土等への対応
→通報情報の共有や建設現場パトロールの実施等
②盛土規制法と廃棄物処理法の適用関係
1)地方公共団体の施設での盛土
・公共施設用地として扱われるため、盛土規制法の規制対象外。
2)民間の廃棄物処理施設での盛土
・許可制や委託により安全性が確保されている場合、盛土規制法の許可は不要。
3)非常災害時の応急措置としての盛土
・自治体や委託を受けた民間事業者が行う工事は、災害の発生のおそれがないと認められるため、許可不要。
③廃棄物処理法の手続きにおける盛土等関係の技術上の基準の適合、事業者への行政処分
・盛土規制法の許可が不要な場合も、
・廃棄物処理施設において、盛土等への災害防止に必要な措置が不十分(盛土規制法違反)が疑われる場合は、停止命令や許可の取り消しも可能。
通知の中で、第2にある「民間の廃棄物処理施設」と「災害廃棄物」について、さらに細かく確認します。
5.廃棄物処理施設で盛土規制法の許可が必要になりうる注意点
前述の通り、民間の廃棄物処理施設においては、行政からの許可や委託により安全性が確保されている場合、盛土規制法の許可は不要とされています。
しかし、「廃棄物処理法」による許可から外れたものについては、規模によっては盛土規制法の規制対象となります。
以下に例を紹介します。
(1)最終処分場
【出展:『宅地造成及び特定盛土等規制法及び廃棄物の処理及び清掃に関する法律の運用に係る関係部局間の連携に際しての留意事項について(通知)』別図1】
〇:盛土規制法の許可不要工事になるもの
ア 埋立地において覆土する場合
イ 埋立地及び設備(※地滑り防止工等が設けられたもの限る)に、覆土用の土石を仮置きする場合
✕:盛土規制法の許可が必要になりうるもの
エ 最終処分場の埋立地・設備以外に、覆土用の土石を仮置きする場合
(2)中間処理施設
【出展:『宅地造成及び特定盛土等規制法及び廃棄物の処理及び清掃に関する法律の運用に係る関係部局間の連携に際しての留意事項について(通知)』別図2】
〇:盛土規制法の許可不要工事になるもの
ウ 中間処理施設内で、廃棄物と土石の混じった状態で保管する場合
✕:盛土規制法の許可が必要になりうるもの
オ 中間処理を行う際に廃棄物を保管する施設以外の場所に保管する場合
カ ふるい機で分別処理をした後に、廃棄物と分けられた土石の堆積を行う場合
キ 廃棄物処理の一連の工程に含まれないと判断される場合
ク 自ら廃棄物を処理する場合 (廃棄物処理法に基づく許可がなく、安全性を担保する審査等を経ていないため)
盛土規制法の許可が必要になりうるものについては、前述の「2.盛土規制法とは」にある要件に該当する場合は手続きが必要になります。
6.災害廃棄物における盛土規制法の取り扱い
「3.廃棄物処理法と盛土規制法の線引き」で触れていましたが、非常災害時には事前の手続きを取ることが難しいことを考慮し、国、地方公共団体等が非常災害のために必要な応急措置として行う工事は許可不要工事となります。
(盛土規制法施行規則第8条第8項)
盛土規制法施行規則
(宅地造成等に伴う災害の発生のおそれがないと認められる工事)
第八条 令第五条第一項第五号の主務省令で定める工事は、次に掲げるものとする。
(中略)
八 国若しくは地方公共団体又は次に掲げる法人が非常災害のために必要な応急措置として行う工事
イ 地方住宅供給公社
ロ 土地開発公社
ハ 日本下水道事業団
ニ 独立行政法人鉄道建設・運輸施設整備支援機構
ホ 独立行政法人水資源機構
ヘ 独立行政法人都市再生機構
また、上記規定における「国、地方公共団体又は地方住宅供給公社等」については、
地方公共団体等の委託により工事を行う者も含むため、委託を受けた廃棄物処理業者の行為も許可不要工事となります。
例)
市町村等が災害廃棄物仮置場等において、土石と廃棄物を分別する作業によって土石を堆積する行為 → 許可不要工事
市町村等の委託を受けた廃棄物処理業者が行う上記の行為 → 許可不要工事
7.廃棄物処理法と盛土規制法に関するQ&A
※各自治体で条例等の関係で取扱いに差があり得るので、必ず各自治体にもご確認ください。
Q:省令にある盛土規制法の許可不要工事で廃棄物処理法による許可を受けているものとありますが、一般廃棄物処理施設(8条施設)・産業廃棄物処理施設(15条施設)が対象でしょうか?
A:設置許可にかかるものだけでなく、変更許可や廃棄物処理法第7条・第14条の処分業にかかる許可も対象となります。
→廃棄物部局での審査を受けての許可がでているため。
(※廃棄物部局では新しい盛土規制での基準も把握して審査を行います。)
Q:盛土規制法の許可不要工事で、最終処分場は対象になりますか?
A:廃棄物処理法の許可を受けた施設なので、他と同様に盛土規制法の許可不要工事となります。
→ただし、最終処分場の埋立地・設備以外の土地に覆土用の土を堆積することは、盛土規制法の許可対象となります。
「5.廃棄物処理施設で盛土規制法の許可が必要になりうる注意点」参照
Q:最終処分場の跡地利用の取り扱いはどうなりますか?
A:最終処分場の埋立て完了後に、廃棄物処理法に基づく廃止の手続き及び区域指定を受けた最終処分場の跡地において盛土等を行う場合は、盛土規制法の許可等が必要となる場合があります。
Q:産業廃棄物の土石・がれきの中間処理施設で、中間処理を終えた砕石や土砂については、盛土規制法の規制対象となりますか?
A:廃棄物処理法の規制を外れた段階で、盛土規制法の規制対象となります。規制基準を超えて堆積などを行う場合は許可等対象となりえます。
8.まとめ
今回の記事では、廃棄物処理法と盛土規制法の関係を取り上げました。
今後各自治体内の部局をまたがって規制や指導が行われていくので、しばらくは自治体側としても手続きに時間がかかることも予想されます。予定通りに工事を進めていくためにも、早めの自治体への相談・確認が必要です。
ほかにも廃棄物処理施設や工場の設置の際は、様々な調査事項や法令が関係してくるため、専門家のサポートが必要なケースが多くなります。株式会社環境と開発は、長年のコンサルティング経験を活かしたサポートをしています。
残土条例や盛土規制法の対応についても、宅地開発・開発許可や森林法なども含め対応できますので、まずはご相談ください!
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