2050年カーボンニュートラルの実現に向けた日本の枠組み・流れを廃棄物関係の目線で解説!
2020年10月、日本政府は2050年までに温室効果ガスの排出を全体としてゼロにする、
カーボンニュートラルを目指すことを宣言しました。
カーボンニュートラルを実現するために、様々な業界で変革が必要になっており、
様々な取組の中で、廃棄物処理、産業廃棄物の扱いでも新しい動きが進められています。
今回は、2050年カーボンニュートラルの実現に向けた様々な日本での枠組みや流れについて解説いたします。
廃棄物処理の目線で解説しますので、是非ご覧ください。
また、用語が分からないところなどあれば、別記事にまとめた
「脱炭素社会に向けて 廃棄物関係の用語を改めて解説!」をご覧ください!
2.グリーン成長戦略
(1)資源循環関連産業
(2)成長戦略「工程表」
3.循環経済工程表
4.GX実現に向けた基本方針
5.まとめ
1.2050年カーボンニュートラルの実現に向けた日本政府の取組み
2050年カーボンニュートラルの実現に向けて、様々な政府の取組みがなされてきました。2020年10月 | 2050年カーボンニュートラルの表明 |
2021年4月 2021年6月 2021年8月 2021年10月 2021年10~11月 |
2030年度温室効果ガス排出量46%削減目標の表明 地球温暖化対策推進法の改正① 地域脱炭素ロードマップの策定 ◆グリーン成長戦略の策定 ◇中長期シナリオ(案)【※名称略】の策定 地球温暖化対策計画の改定 第6次エネルギー基本計画の策定 パリ協定に基づく成長戦略としての長期戦略 COP26(イギリス) |
2022年5月 2022年7月 2022年9月 2022年11月 |
地球温暖化対策推進法の改正② GX実行会議の設置 ◆循環経済工程表の策定 COP27(エジプト) |
2023年2月 2023年4月 |
◆GX実現に向けた基本方針のとりまとめ G7気候・エネルギー・環境大臣会合(日本:札幌) |
以上の取組みの中で、廃棄物処理関連で大きなポイントは次の動きです。
◆2021年6月 グリーン成長戦略(経済産業省)
◇2021年8月 廃棄物・資源循環分野における2050年温室効果ガス排出実質ゼロに向けた中長期シナリオ(案)(環境省)
◆2022年9月 第四次循環型社会形成推進基本計画の第2回点検結果(循環経済工程表)(環境省)
◆2023年2月 GX実現に向けた基本方針のとりまとめ(閣議決定)
この中で、環境省が発表した「廃棄物・資源循環分野における2050年温室効果ガス排出実質ゼロに向けた中長期シナリオ(案)」はボリュームがあるので、別ブログで詳しく解説します。
他のものについて、これから解説していきます。
2.グリーン成長戦略
グリーン成長戦略とは、2050年に向け経済と環境の好循環を作っていく産業政策をグリーン成長戦略とするもので、
2021年6月に経済産業省で取りまとめられました。
技術革新を通じて今後の成長が期待される14の産業において、
予算、税、規制改革・標準化、国際連携などあらゆる政策を総動員して、
高い目標を設定し、現状の課題と今後の取組を明記しました。
この今後の成長が期待される14の産業に「資源循環関連産業」があります。
(1)資源循環関連産業での目標と取組
資源循環関連産業の現状と今後の方針として、次のように示されています。〇リデュース、リユース、リサイクル、リニューアブルについては、法律や計画整備により技術開発・社会実装を後押ししている。
〇廃棄物発電・熱利用、バイオガス利用については、既に商用フェーズに入っており普及や高度化が進んでいる。
〇今後、これらの取組について、「国・地方脱炭素実現会議」等における議論を踏まえつつ、技術の高度化・効率化、設備の整備、低コスト化・デジタル化等により更なる推進を図る。
〇循環経済への移行も進めつつ、2050年までに、温室効果ガスの排出を全体としてゼロにする。
具体的な今後の取組で特徴的なのは次のとおりです。
【リデュース・リニューアブル】
〇バイオマス化:バイオプラスチックの導入、バイオマス素材の高機能化や用途の拡大・低コスト化に向けた技術開発・実証
〇再生材利用:リサイクル技術の開発・高度化、設備の整備、需要創出
→国民生活において環境に配慮した製品の選択肢の拡充
地域での廃棄物焼却に伴うCO2排出の低減
【リユース・リサイクル】
〇リサイクル:リサイクル性の高い高機能素材やリサイクル技術の開発・高度化、回収ルートの最適化、設備容量の拡大に加え、再生利用の市場拡大を図る
〇焼却施設排ガス等の活用:技術開発や実証事業等を通じたスケールアップ、コスト低減等を図り、実用化・社会実装
→廃棄物や排ガスを地域資源として活用した産業振興等、地域循環共生圏の創造による持続可能な地域づくり
【リカバリー】
〇廃棄物発電:低質ごみ下での高効率エネルギー回収を確保するための技術開発
〇熱利用:蓄熱や輸送技術の向上並びにコスト低減
〇バイオガス化:メタン化施設の大規模化を見据えた技術実証
〇廃棄物の広域的な処理や廃棄物処理施設の集約化
→地域循環共生圏の核となる地域に新たな価値を創出する施設整備
(2)成長戦略「工程表」
資源循環関連産業の成長戦略工程表がグリーン成長戦略で示されています。2020年にたてられたものなので、工程表上は2023年はかなり進んでいないといけない状況です。
リデュースは導入拡大・コスト低減しながら現在の対策を進めていくという予定です。
リニューアブルとリサイクルは2023年度までの開発・実証フェーズ、導入拡大・コスト低減フェーズを経て、2024年からの自立商用フェーズを予定しています。
焼却施設排ガス等の活用は技術開発・コスト低減のハードルが高いことを見据えて、一番遅い2040年代での自立商用フェーズを予定しています。
回収したエネルギー利用の高度化・効率化は導入が進むのは2030年度、
エネルギー回収の高度化・効率化は導入が進むのは2040年度を予定しています。
【参考資料】(経済産業省)
「2050年カーボンニュートラルに伴うグリーン成長戦略を策定しました」
3.循環経済工程表
2018年に閣議決定された「第四次循環型社会形成推進基本計画」は2年に1回程度、中央環境審議会が循環基本計画に基づく施策の進捗状況を評価・点検すると定めていました。
その第2回点検結果として、報告書「第四次循環型社会形成推進基本計画の第2回点検結果(循環経済工程表)」が
2022年9月に環境省で取りまとめられました。
現状と評価は次のとおりとなっています。
ライフサイクル全体での徹底的な資源循環:
「国民1人当たりの一次資源等価換算した天然資源などの消費量」は改善傾向
「リユース市場規模」「シェアリング市場規模」は拡大傾向
評価素材群は、現行の循環基本計画が取り上げているプラスチック、バイオマス、ベースメタルやレアメタルなどの金属、土石・建設材料、温暖化対策などにより新たに普及した製品
持続可能な社会づくりとの統合的取り組み:
「循環型社会ビジネスの市場規模」は年々増加傾向にあるが、目標達成は厳しい状況にあり、市場規模拡大が必要
「廃棄物の原燃料・廃棄物発電などへの活用による他部門での温室効果ガスの排出削減量」は増加傾向
多種多様な地域循環共生圏形成による地域活性化:
2000年度から各種ごみ排出量は削減されてきたが、近年は削減率が減っており、特に事業系ごみ排出量は横ばい傾向
地域循環共生圏形成に取り組む地方公共団体数は少なく、地域循環共生圏についての認知度も低いことから、認知度を引き上げることが重要
適正処理のさらなる推進と環境再生:
「不法投棄量」「不適正処理量」「不法投棄件数」「不適正処理件数」は2000~2005年頃と比べると改善傾向だが、監視を継続する必要
「一般廃棄物最終処分場の残余年数」「産業廃棄物最終処分場の残余年数」はすでに目標を達成
適正な国際資源循環体制の構築と循環産業の海外展開の推進:
「資源循環分野を含む環境協力に関する覚書締結などを結んだ国の数」は年々増加している
「循環産業海外展開事業化促進事業数」は長期的には減少傾向かつ近年横ばいで推移しており、さらなる取り組みが求められる
これらの評価・点検結果をもとに、循環経済工程表を次のように策定しています。
【出典】環境省 「第四次循環型社会形成推進基本計画の進捗状況の第2回点検結果及び循環経済工程表」
(※細かくて見にくいため、以下、左右2つに切った拡大版の表としています。)
①循環経済の役割と2050年を見据えた目指すべき方向性:
現在の経済社会の物質フローをライフサイクル全体で徹底的に資源循環させるフローに最適化していく。
②素材ごとの方向性:
現行の循環基本計画に示されている各素材のライフサイクル全体での資源循環の方向性に加えて、以下が推奨される。
・素材ごとにライフサイクル・バリューチェーン全体でのロスゼロを目指す。
・製品のライフサイクルの段階の多くを海外に依存しているモノについては、トレーサビリティを確保し、サプライチェーン上でのリスクや社会的責任に対応することが重要。
・脱炭素シナリオの研究や、資源循環の取り組みによる脱炭素社会への貢献に関する分析による知見の充実も求められる。
・素材ごとの施策の展開・効率化・高付加価値化を進め、3R+Renewable(再生)の取り組みの展開が望まれる。
③製品ごとの方向性:
ライフサイクル全体で資源循環させるフローを最適化する。
修理・分解・交換・アップデートなどが容易にできる設計や再生可能資源の促進、リユース・修理・サブスクリプションなどの循環型事業モデルの取り組みを推進する
④循環経済関連ビジネス促進の方向性:
循環経済に関する技術を持つ企業や循環経済関連ビジネスの構想を持つ企業が連携して取り組みを社会実装し、循環経済関連ビジネスの実証フィールド国家となることを目指す
⑤廃棄物処理システムの方向性:
廃棄物・資源循環分野における脱炭素技術の評価検証や、廃棄物処理システムと施設整備の方針などの検討を進め、2050年カーボンニュートラル実現に向けた取り組みを進める
⑥地域の循環システムの方向性:
地域循環共生圏を踏まえた資源循環モデルを提示し、廃棄物を地域の資源として活用する取り組みを推進する。
2025年度までに資源循環分野における地域循環共生圏の構築を推進するためのガイダンスを策定する
⑦適正処理の方向性:
まず3R+Renewableを徹底し、その後、なお残る廃棄物の適正処理を確保するという優先順位で取り組む
⑧国際的な循環経済促進の方向性:
日本の循環産業や資源循環モデルの海外展開を推進し、世界規模での脱炭素や循環経済への移行に貢献する
⑨各主体による連携、人材育成の方向性:
循環経済への移行に向けて幅広い関係主体が連携し、官民一体での取り組みを推進する。
「循環経済パートナーシップ(J4CE)」を活用して循環経済促進に取り組み、国内外に情報発信する。
優れた能力・知識を有する人材育成に取り組む
4.GX実現に向けた基本方針
GX実現に向けた基本方針とは、2023年2月に閣議された方針です。次のように方針を示しています。
1.エネルギー安定供給の確保に向け、徹底した省エネに加え、再エネや原子力などのエネルギー自給率の向上に資する脱炭素電源への転換などGXに向けた脱炭素の取組を進めること。
2.GXの実現に向け、「GX経済移行債」等を活用した大胆な先行投資支援、カーボンプライシングによるGX投資先行インセンティブ、新たな金融手法の活用などを含む「成長志向型カーボンプライシング構想」の実現・実行を行うこと。
経済産業省で取りまとめている中で、各分野別の基本方針があり、
この中で産業別事例として資源循環産業が示されています。
(資源循環産業)
成長志向型の資源自律、循環経済の確立に向けて、動静脈連携による資源循環を加速し、中長期的にレジリエントな資源循環市場の創出を支援する制度を導入する。
ライフサイクル全体での資源循環を促進するために、循環配慮設計の推進、プラスチックや金属、持続可能な航空燃料(以下「SAF」(Sustainable Aviation Fuel)という。)等の資源循環に資する設備導入等支援やデジタル技術を活用した情報流通プラットフォーム等を活用した循環度や CO2 排出量の測定、情報開示等を促す措置にも取り組む。
正直なところ、具体的な動きがでてきてからという部分であるので、
新たな技術・投資への動きを上手く利用していくことが今後も大事になってくるでしょう。
5.まとめ
2050年カーボンニュートラルの実現に向けた様々な日本での枠組みや流れについて解説してきました。
色々と枠組みがある中で、具体的な方針が少しずつ出てくる状況です。
2030年、2040年と10年スパンでの動きとなりますが、
確実に2050年を見据えて、実際に制度として変更が起こるタイミングが来ると思います。
後手に回らないように、情報をつかんでいくことが肝心です。
あと、今回説明できていない「廃棄物・資源循環分野における2050年温室効果ガス排出実質ゼロに向けた中長期シナリオ(案)」については別ブログで解説いたしますのでお待ちください。
また、「脱炭素社会に向けて 廃棄物関係の用語を改めて解説!」として、用語の説明も別ブログでUPしていますので、ぜひご覧ください!
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