産業廃棄物処理施設の脱炭素化と「プラスチックに係る資源循環の促進に関する法律」の関係 ~「脱炭素化」の具体的な方向性を経験豊富な専門家が解説します!~
このブログは、令和4年2月17日に開催された、産業廃棄物処理事業経営相談会オンラインセミナーで講演した「産業廃棄物処理施設の脱炭素化と事業継承・M&Aにおける産業廃棄物処理施設の注意点」の内容を抜粋して掲載しています。
題 目:「産業廃棄物処理施設の脱炭素化と事業承継・M&Aにおける
産業廃棄物処理施設の注意点」
講 師:株式会社環境と開発 代表取締役 田邉陽介
目 次
1.産業廃棄物処理施設の脱炭素化
今後の産業廃棄物処理施設における脱炭素化の具体的な方向性について、一般論ですが、二酸化炭素の話は置いておいて、廃棄物に関する説明をいたします。
1)規制によらないコントロール手法とは、規制によるコントロール手法とは?
行政手法の話になります。行政が計画などを立てる際に色々な手法があります。
資料1のように「規制によらないコントロール手法」「規制によるコントロール手法」「紛争の解決を図るための手法」と一般的にこのように分けます。
「紛争の解決を図るための手法」については、あっせんや調停など行政が間に入って行う紛争処理手法です。普段あまり関係ないので今回は説明いたしません。
規制によらないものと規制によるものとして2つ大きく分かれていて、例えば、先ほどから説明しています中長期シナリオのように、計画を作って全体を導いていくというのは規制ではなく、やらなければいけないということではないので、方向性を示して同じ方向に導くやり方とか、我々の身近なところでは、補助金制度を作って世の中を導いていく、民間活力活用と言ったPFI制度や指定管理者制度などを使います。
規制によるコントロール手法を廃棄物処理業者に置き換えて説明すると、許可を取らないといけない。事前協議をしないと許可をおろさない。事前協議をしないと他県からの廃棄物を受け入れさせない。というような規制をかける手法になります。
規制によらない手法として、優良産業廃棄物処理業者認定制度を活用して廃棄物処理業者を誘導するとか、補助金制度を使うとか、民間活力を活用して、公共関与最終処分場の運営を委託したりする手法で、行政の皆さんは動向を方向づけしている。ということになっています。
2)脱炭素化と「プラスチックに係る資源循環の促進に関する法律」との関係
脱炭素化に向けてどのような施策が取られているのかということを見ていきましょう。
まず「規制によるコントロール手法」として、今注目されているのが、4月に新しく法律が施行される、「プラスチックに係る資源循環の促進に関する法律」です。
これでどのようなことをするかというと、この中でプラスチック使用製品産業廃棄物等について謳われていて、「産業廃棄物の中でもこのようなことをやってください。」ということが決められていています。
【排出の抑制・再資源化等の実施の原則①】のように、排出抑制、分別排出、再資源化、熱回収の4つに分かれていて、この順番で実施してください。という内容になっています。
実は当たり前のことで、今までとあまり変わりありません。
【排出抑制・再資源化の実施の原則②】のように、再資源化等を適正に実施することができる者に委託すること。とあり、処理業者や今後できる新しい処理施設等へ委託する。ということになっています。
委託をする場合でも、再資源化を実施することが出来ない場合に、熱回収を適正に行うことが出来る者に委託すること。書いてあり、処理業者には直接規制はかかっていませんが、これはある程度規模が大きい排出事業者に対して規制がかかってくるということになります。
結果的に廃棄物処理業者は、ある一定規模の廃プラが発生する排出事業者からは、熱回収ができない焼却や直接の埋立を行っている処理業者は、取引が厳しくなってくるということが、この法律から読み取れます。
3)排出抑制・再資源化で生き残るためには・・・
排出の抑制・再資源化等の実施の原則を1枚にまとめたものが資料2「排出の抑制・再資源化等の実施の原則」になります。
左側に項目がありますが、排出事業者は、まず再資源化を実施しなさい。実施できないなら熱回収をしなさい。自社で出来ない場合は、委託をしてもいいが、委託をする場合は、再資源化、熱回収が出来る者に限る。という法律の仕組みになっています。
今後、廃廃プラスチックの処理に関しては、どんどん処理方法が変わってきます。
どういうことかというと、熱回収を伴わない焼却を極力なくす。シナリオでいうところの、マテリアルリサイクル、ケミカルリサイクルをしつつ、発電量を増やしていくということになりますので、対策を実現するために法律が制定され、排出事業者に対して縛りがかかるということになっている。とご理解ください。
次の手法ですが、全く別の見方で、現状すでに動いている施策ですが、規制によらない手法ということで補助金制度を活用して方向性を誘導するという手法です。
3R研究財団等を経由して出している「廃棄物処理×脱炭素化によるマルチベネフィット達成推進事業」というもので、災害廃棄物を絡めてマルチベネフィット、要は、マルチとは複数という意味で、複数の効果を取りましょう。脱炭素だけでなくて災害廃棄物の処理も出来る。というような意味合いです。「複数の利点を持ったものに補助します。」という事業になります。こちらも廃棄物の高効率熱回収事業で発電の量を増やすとか、または、隣で廃熱利用をするといった施設に補助金を出すものになります。
それと燃料製造ですが、これは直接焼却ではなく、固形燃料とかRPFを作るような設備を作ることで焼却を減らす。最終的にはセメント工場やRPFを使うところで、結果的には温室効果ガスは出るのですが、「エネルギーとして有効活用できるので良い」という考え方になります。「燃料を作る。」という事と、「燃料を受け入れるために必要な施設を作る。」とう事にも補助金が出すことで、同じ方向性で温室効果ガスを削減する。というものがあります。
もう一つの補助金として資源循環高度化設備導入促進事業、メインにプラスチックのマテリアルリサイクルに向くための色々な設備に補助金を出します。という事業があります。
詳細は割愛しますが、このような補助金は来年度も継続して出てくる予定です。
エネルギー化するかマテリアルリサイクル又はケミカルリサイクルに持っていくか、とうものに補助金を出して誘導していくという手法をとっています。
すでにある「規制によらないコントロール手法」として、廃棄物熱回収施設設置認定制度を設けてあります。
意識の高い排出事業者が認定施設に処理委託を行うように、ある程度の高率の発電ができている焼却施設を認定するという制度が現在動いています。
発電をされている会社は、これに当てはまるか見てもらうことが必要に思いますが、かなり、熱効率が高いので、発電しているからと言ってすぐにこれが適用できるかというとそういうわけでもありません。
こういう規制を今後作り替えながら、活用してもらえるような制度に変えていき、発電に導いていくという手法になります。
2.「プラスチック資源循環促進法」が廃棄物処理に与える影響とは?
現状、産業廃棄物処理業者対して温室効果ガスの削減は直接の規制はありませんが、廃プラスチック類に関していうと、プラスチック資源循環促進法が今年の4月に施行されるので、結果的に排出事業者側に規制ができてきます。そうするともちろん委託を受ける廃棄物処理業者にも影響が出てくることは容易に想像ができます。廃プラスチックを扱う廃棄物処理業者は、注視をしておく必要があると思います。
中長期シナリオ(案)で2035年度までに廃プラスチック類を焼却する全ての施設においてエネルギー回収が行われるという想定がされています。
今、エネルギー回収を行っていないところに関しては、今後、そういう施設を追加することが求められます。
また、そこに向かっていくために補助金を出しながら、温室効果ガス削減に導いていくことになります。
今のところ規制をするという話は聞こえてきませんが、先日環境省の方にお会いする機会がありましたので話をお伺いしましたが、「現状、そこまでは考えていないが、今後検討が進み、方向性としてはこれを目指してもらうということになります。特に、廃プラスチック類については、3R+熱回収(廃棄物発電・燃料化等)は避けられない流れになっていきます。」との事でした。
では今後、廃棄物処理業者は何をしないといけないかというと、まずは、自社の顧客(排出事業者様)からの要望はしっかり聞いくということです。
中小企業を多く相手にしているのか、大企業から多くを受けているのかによって、対応のスピードが全然違ってきます。多量排出事業者のお客様が多いよという事業者様は、かなり早いタイミングで色々なご要望が出てくると思います。
例えば、地域に自社しかなくて、処理できるところが他にないというような場合は、あまり慌てて設備投資をする必要はなく、周辺の状況を見ながら対応すると良いのではないかと思います。
都市部ではどうしても競争が激しいので、まずはこれを見ながら、他社より早く色々と対応をしていくということが必要になると思います。
地方に行けば行くほど、周囲の状況を見なが、どの順番で進めていくかということが、経営判断として必要になってくるのではないかと思います。
地域によっては、焦る必要はない場合もあるかも知れませんが、やらなくて良いということではありません。ただ周りからのプレッシャーは小さいと思われます。逆に言うと、そこでしっかり「脱炭素化」に舵を切っていけば、地域の№1になっていけるということでもあります。
あとは場所が確保できる。又は、排出事業者様とうまく連携ができれば、排出事業者様工場の隣接地や、場合によっては工場内に土地を借りて、処理施設を立地し、電気や熱を工場に供給していく。これはPPAモデルといいいますが、どちらかというと再生可能エネルギー、太陽光発電とか、このモデルで発電所を作ることが増えてきています。
廃棄物処理でもこのモデルが活用できるのではないかと思っています。
そういう意味では、大手の排出事業者と取引がある所に関しては、その可能性として、排出事業者の工場の一部をお借りして、処理施設を廃棄物処理業者が運営して発電し、熱と電気を排出事業者へ供給するというモデルを作っていくとうことは、行政の規制というよりは、処理業者の動きとしてできることではないかと思います。かなり得意な事例ですが、こういう発想も必要になってくる時代でもあり、排出事業者もそのような提案を求めていることでもあります。ここまでが温室効果ガスに関することになっています。
3.おまけの話~炭素税~
先日経営塾のOB会での温室効果ガス関係の話があったので少し付け加えをさせていただきます。
資料3廃棄物・資源循環分野お中長期シナリオと温室効果ガス排出量の見通し」の発想ですが、
2050年度実質温室効果ガス排出0を目指していくわけですが、実際、廃棄物発電は、物は燃やすことで二酸化炭素が出ることに変わりはないのですが、色々な理屈で相殺して0の扱いにしょうというのがこの計画なのですが、実際CO2は出ているので、出ているものに対して炭素税がかかってくる可能性はかなりあるのではないかと思っていて、そのあたりが皆様の処理事業の中で処理費に反映されたり、排出事業者様への影響がでたり、この中長期シナリオには書かれていませんが、実際には出てきますし、CO2もでます。
実はRPF等も同様で、熱源としてリサイクルはしていても、結局は、燃料として燃やされてCO2がでることに変わりはないので、ここでは想定されていない規制が世界的にも出てくる可能性があるのではないかとう話が出ていました。
本日お話ししたことは、今、環境省が出しているシナリオ上で想定されている2050年の話で、もっと外部の圧力がかかってくると、そもそも、もっと違った規制がかかってくる可能性があるということは認識した上で、日々情報を収集にあたられたらどうかと昨日の話を聞いて思ったところです。
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~お役立ち情報~
環境省
国土交通省
公益財団法人 産業廃棄物処理事業振興財団
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