脱炭素社会に向けて 廃棄物関係の用語を改めて解説!
脱炭素社会とは、地球温暖化・気候変動の原因となる温室効果ガスの実質的な排出量ゼロを達成している社会を指します。
脱炭素社会に向けて、全世界で変革が進んでいます。
日本でも、今までの取組みからさらに進んで、2050年までの脱炭素社会実現を目指しています。
とはいえ、CE、CN、GHG、GX、BAUなどアルファベットの用語も多く、
聞いたことはあるけどよく分からない言葉もあるのではないでしょうか?
まず初回として、基礎知識の振り返りという事で、脱炭素社会に向けての廃棄物関係の用語・略語についてご紹介いたします。
用語について、廃棄物処理の目線で解説しますので、是非ご覧ください。
2.リサイクルに関係する用語 2R、MRなど
3.二酸化炭素回収に関係する用語 CCU、CCSなど
4.単位に関係する用語 ktCO₂、MtCO₂
5.まとめ
1.全体的な流れに関係する用語 CE、CN、GXなど
◆CE(Circular Economy):サーキュラーエコノミー、循環経済、循環型経済
CE(サーキュラーエコノミー)とは、日本語では「循環経済」や「循環型経済」と訳される新しい経済システムのことです。
環境省では以下のように定義しています。
従来の3Rの取組に加え、資源投入量・消費量を抑えつつ、ストックを有効活用しながら、
サービス化等を通じて付加価値を生み出す経済活動であり、
資源・製品の価値の最大化、資源消費の最小化、廃棄物の発生抑止等を目指すもの。
出典:環境省 「令和3年版 環境・循環型社会・生物多様性白書」
これまでの直線型な経済から、資源を循環させて最終的に廃棄物を出さないことを目指しています。
◆CN(Carbon Neutrality):カーボンニュートラル
CN(カーボンニュートラル)とは、温室効果ガスの排出量と吸収量を均衡させることを意味します。
2015年のパリ協定で定められた地球温暖化対策の世界的な取り組みでの考え方です。
2020年10月、日本政府は2050年までに温室効果ガスの排出を全体としてゼロにする、カーボンニュートラルを目指すことを宣言しました。
「排出を全体としてゼロ」というのは、二酸化炭素をはじめとする温室効果ガスの「排出量」から、
植林、森林管理などによる「吸収量」を差し引いて、合計を実質的にゼロにすることを意味しています。
出典:環境省「脱炭素ポータル」
吸収量を考えるときに、大気中のCO2直接回収・貯留などのCO2排出を減らす技術(カーボンマイナス技術)も含まれています。
CNと似たような言葉で「カーボンネットゼロ」というものがありますが、明確な区別はなく同様の意味で使われています。
◆GX(Green Transformation):グリーントランスフォーメーション
GXとは、温室効果ガスの排出削減を目指す取り組みを、経済成長の機会と考え、産業競争力の向上や、社会全体の変革につなげようとする活動のことです。
日本では経済産業省がとりまとめた考え方で、CEと同様に経済活動を含めた、意識・行動・ライフスタイルを変革していくことを見据えています。
X=Transformation
TransformationのTransには交差するというニュアンスがあり、交差を1文字で象徴する符号としてXが用いられています。
◆GHG(GreenHouse Gas):温室効果ガス
温室効果ガスは、世界中で問題になっている地球温暖化をもたらす原因物質です。
温室効果ガスに最も大量に含まれるのは二酸化炭素ですが、その他にメタン、一酸化二窒素、
さらに、ハイドロフルオロカーボン、パーフルオロカーボン、六フッ化硫黄、三フッ化窒素などの代替フロンが含まれています。
◆国家インベントリ報告書(National Inventory Report: NIR)
:排出・吸収量の算定方法や使用データの出典等について説明した報告書
温室効果ガスインベントリとは?
インベントリとは、一定期間内に特定の物質がどの排出源・吸収源からどの程度排出・吸収されたかを示す一覧表のことです。
気候変動・地球温暖化の文脈では、一国が1年間に排出・吸収する温室効果ガスの量を取りまとめたデータのことを、一般的に「温室効果ガスインベントリ(Greenhouse Gas Inventory)」と呼んでいます。
温室効果ガスインベントリは、世界全体や各国における温室効果ガス排出量を把握するために作成されています。
inventory:(商品などの)目録、一覧表、在庫表
国連気候変動枠組条約に基づき、毎年自国の温室効果ガスインベントリを作成し、条約事務局へ提出することが義務付けられています。
日本も毎年温室効果ガスインベントリを作成し、直近年の温室効果ガス排出・吸収量を推計・公表するとともに、排出・吸収量データ及び関連情報を含む温室効果ガスインベントリを条約事務局に提出しています。
出典:環境省「温室効果ガス排出・吸収量等の算定と報告」
◆BAU:Business as Usualの略
英語で一般的に使われる表現で、ビジネスや業務などが通常通りである、という意味です。
環境省からでている「廃棄物・資源循環分野における2050年温室効果ガス排出実質ゼロに向けた中長期シナリオ」で出てきますが、
「BAUシナリオ」とは、今後追加的な対策を見込まないまま2050年まで推移した場合のシナリオを指しています。
2.「リサイクル」に関係する用語 3R、2R、MRなど
◆2R:発生抑制(Reduce)と再利用(Reuse)
◆3R:2R+再生利用(Recycle)
リデュース、リユース、リサイクルの3Rはこの順番に取り組むべきとされていますが、
日本ではリデュース・リユースの取組が進展していないとの指摘があります。
製品の生産や流通、廃棄に消費される資源やエネルギー、また発生する温暖化ガスを削減するためにも、
リデュース・リユースは優先して取り組まなければならないとされ、2Rと言われています。
◆3R+Renewable:3R+再生可能
従来の3Rの取組に加え、再生可能な資源に置き換える取り組みです。
化石資源由来のプラスチックから、再生可能なバイオマスプラスチックや紙などへ代替する、といったものです。
◆MR(Material Recycle):マテリアルリサイクル
回収した資源ごみなどを原料にして新しいものをつくり出し、再利用する方法です。
プラスチックだと、破砕してフレーク状にしたり、溶かしてペレット状にしたり、さらに溶かして樹脂材料にして、プラスチック製品に再生します。
◆CR(Chemical Recycle):ケミカルリサイクル
使用済みの資源を化学的(chemical)に分解し、原料に変えてリサイクルする方法です。
プラスチックだと、高温で熱分解を行い、合成ガスや分解油などの化学原料にしています。
食品廃棄物のバイオガス化(メタン発酵)もケミカルリサイクルとなります。
◆ER(Energy Recovery):エナジーリカバリー、エネルギー回収
廃棄物焼却施設での発電・熱回収や廃棄物等の燃料利用のことです。
熱回収は前はサーマルリサイクルと呼ばれていましたが、廃棄物そのものを再利用する手法ではないため「リサイクル」から変わりました。
◆バイオマスプラスチック:植物などの再生可能な有機資源を原料とするプラスチック
生分解性プラスチック(化石資源由来)と合わせて「バイオプラスチック」と総称されます。
バイオマスプラスチックにも生分解性のものがあるので、バイオマスプラスチックかつ生分解性プラスチックに分類されるものもあります。
出典:環境省 プラスチック資源循環「バイオプラスチックとは?」
バイオマスプラスチック(非生分解性)は、汎用樹脂といわれる幅広い製品に使われているPE(ポリエチレン)等や耐熱性、耐衝撃性などの機能が強化されたエンジニアリング・プラスチックといわれる樹脂のPC(ポリカーボネート)等が存在しています。バイオPETのように、部分的にバイオマス由来になっているものもあります。
3.炭素回収・利用に関係する用語 CCU、CCS
◆CCU(Carbon dioxide Capture and Utilization):二酸化炭素の回収・有効利用
◆CCS(Carbon dioxide Capture and Storage):二酸化炭素の回収・貯留
◆CCUS:CCSとCCUの両方を指したもの
二酸化炭素回収・有効利用・貯留のことです。
出典:環境省パンフレット「CCUSを活用したカーボンニュートラル社会の実現に向けた取り組み」
4.単位に関係する用語 ktCO2、MtCO2
◆ktCO₂
温室効果ガスの排出量を二酸化炭素換算してキロトン(1000トン)単位で表したもの。
例)30,290ktCO₂=3029万トンCO₂
◆MtCO₂
温室効果ガスの排出量を二酸化炭素換算してメガトン(100万トン)単位で表したもの。
例)1,212MtCO₂=121億2000万トンCO₂
5.まとめ
脱炭素に関する用語・略語を簡単ではありますが、解説してきました。
より詳しくは、各項目のリンク先もご覧いただければと思います。
これらの用語が出てくるセミナー内容を抜粋した
「脱炭素における産廃処理施設の方向性」について、
他にも記事をまとめています。
随時アップして参りますのでお待ちください。
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